コンゴ保健省が今月、エボラ出血熱が流行していると宣言した。これまでに東部の北キブ州では50人以上が死亡した。コンゴでは7月末、北西部に位置する赤道州でのエボラ熱流行の終息を宣言したばかりだった。

 エボラ熱はエボラウイルスが原因の感染症で、高熱や頭痛、皮膚からの出血が主な症状。血液や体液の接触によってヒトからヒトへ感染する。致死率は約25~90%に上る。

 今回の地域では政治的な問題が状況をより悪化させているという。

 アフリカ事情通は「北キブ州には100以上の反体制武装集団が活動しており、流行地となっているベニ地域一帯は、隣国のウガンダとつながりのあるイスラム武装勢力の民主同盟軍の拠点となっています。そのため、現地の医療関係者たちは、十分な医療態勢がとれないのです」と指摘する。

 そのような事情から市民生活にも緊迫感が生まれ、現地の売春宿で働いている女性たちには、侮蔑的な目が向けられているという。

 中国・上海を拠点にコンゴに輸入品を送るビジネスをしている40代コンゴ男性はこう語る。

「我々の国では、人に会うと握手をしたりハグしたりするのですが、その習慣がなくなりました。もし相手の手のひらから出血していたら、その血液に触れるだけで感染してしまう可能性があるからです。みんなエボラが怖いのです。もっとひどいのは(北キブ州の州都の)ゴマにある売春宿です。どの宿に行っても閑古鳥が鳴いている始末です。まったく商売になっていません」と明かす。

 10年以上前、コンゴでは、エイズの感染が爆発的に広がり、人々をパニックに陥れた。今回は、エイズよりも恐れられているエボラ熱が猛威を振るっていることで、より事態は深刻となっている。