タイ名物・屋台が消滅危機 裏には警察VS軍の勢力争い

2018年08月16日 17時00分

屋台はカオサン名物だったのに…

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】タイ名物の屋台が今月1日、首都バンコクの“バックパッカーの聖地”カオサン通りから姿を消した。バンコク全域ではかねて屋台の撤去が進んでいたが、外国人観光客の多いカオサン通りとチャイナタウンは特例として営業が黙認されてきた。だが軍事政権は、交通の妨げと衛生的な問題を理由に挙げ、都庁職員に撤去させたのだ。

 周辺は全長約300メートルのカオサン通りを中心にゲストハウス、飲食店や土産物店、旅行会社、クラブなどが密集。近年は旅行者だけでなく地元の若者にも人気のエリアだ。屋台は300軒ほどあり、特に人気だったのはパッタイ(焼きそば)の屋台。焼き鳥やフルーツ、ゲテモノスナック、雑貨のほか、路上マッサージの屋台もあった。ただ当局のお目こぼしか、当面は午後6時から深夜までの営業は許可されるという。

 この強制措置に対し、屋台店主たちは猛反発。バンコク都知事に1日、「死活問題だ」として営業存続の請願書を出した。

 地元大衆紙「カオソッド」によると、都から屋台排除要請を受けた警察サイドには当初、要請を拒否する動きがあったという。現地在住記者の解説。

「もともとカオサンは警察の“シマ”。通りの西側にある警察署がカオサン利権を牛耳って、屋台からショバ代を徴収し営業を認めてきたと言われる。そればかりか警察が直接経営する店も。カオサンは昔から、地元のゴロツキと外国人旅行者の麻薬売買の場所とささやかれてきたが、これを時に黙認し、時に摘発し、カネとヤクの流れをコントロールしてきたのも警察。そんな警察利権に、軍事政権が手を突っ込んだ格好」

 2014年のクーデターで政権を握った軍は、これまで数々の警察利権を潰してきた。今回も軍と警察の勢力争いなのはミエミエだ。

「タイ旅行の楽しみも半減」と嘆く旅行者もいるだろうが、地元民からは屋台撤去を歓迎する声も。「評判の屋台は会社員の何倍も稼いでるのに、ろくに税金を払ってない。シンガポールのように、屋台は決められたスペースに集めて営業させ、税金面でもきっちり管理すべき」という主張だ。

 ただ屋台側も商魂たくましい。以前、同様に屋台が撤去されたスクンビット通りでは、既に業者たちが復活。テーブル形式の大きな屋台ではなく、通り沿いの壁や、閉店した店のシャッターに棚を設置し、そこに商品を並べている。「これなら往来を妨害してないだろ」というわけ。今後も当局とのイタチごっこは続きそうだ。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。