【タイ洞窟】“タムルアンの奇跡”後の超難関

2018年07月05日 18時00分

救出活動に携わる作業員(ロイター)
救出活動に携わる作業員(ロイター)

“タムルアンの奇跡”から一夜明けた3日、新たな難問が浮上した。タイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟内で行方不明となっていた少年ら13人を2日、救出チームが発見。現地は大いに沸いているが、喜ぶのはまだ早い。洞窟内は依然として進入困難な上、雨期のタイでは4日から集中豪雨の恐れがあるという。再び洞窟内の水かさが増せば、救出作戦は振り出しに。最悪、13人は約4か月後の乾期になるまで洞窟内にとどまり続けることになるかもしれない。

「全員無事だが、任務完了ではない」

 チェンライ県のナロンサク・オソタナコーン知事は記者会見でこう述べた。事実、救出作戦はここからが本番だ。

 タムルアン洞窟内で行方不明になっていたのは、地元サッカーチームの11~16歳の少年12人と男性コーチ(25)の13人。先月23日に洞窟内を探検していたところ、雨水による増水で引き返せなくなったものと思われる。

 洞窟の全長は10キロ以上。約60人の潜水士が連日捜索を行ったが、泥水で視界は悪く、道も細く入り組んでおり、難航を極めた。

 一時は13人の命を絶望視する声も上がる中、奇跡が起きたのは2日夜。英国人ダイバーが洞窟入り口から約5キロほど中に入った小高い場所に13人が避難しているのを発見したのだ。地元当局者によれば、複数の軽傷者はいるものの、生命の危険はないという。

 13人の居場所が分かったのだから、あとは全員を無事に脱出させるだけだが、これがS級難度の離れワザだという。

 最も現実的なのは給水ポンプをフル稼働させ、洞窟から水をくみ出し、水位が下がるのを待って13人を救出する方法。しかし雨期のタイではスコールが頻発し、給水ポンプだけではどうにもならない。加えて4日には豪雨予報が出ており、せっかく好転しつつあった状況が一気に振り出しに戻る可能性もある。

「13人は小高い場所で身を寄せ合っているが、容赦ないスコールが連日続けば、そこにも泥水が浸入しないとも限らない」とは地元当局者。

 救助隊は洞窟の排水を続けながら、13人の健康状態の確認に潜水技術のある医療チームを送り込み、医薬品や4か月分の食料を届ける予定というが…。
「4か月分の食料というのが事態の深刻さを物語っています。タイの雨期は10月まで続き、乾期は11月から。深読みすれば当局は最悪のケースとして、救出は乾期の11月以降までかかると想定しているのではないでしょうか」(タイ事情に詳しい旅行関係者)

 一方でスピード勝負を推すのはタイ海軍の指揮官だ。3日午後、記者団に「少年らに潜水具の使い方を教える」と語り、13人に潜水をさせて洞窟入り口まで誘導する方法を示唆した。

 これに猛反対するのは、米フロリダ州で国際地下洞窟救助救出機関の地域調整を担当するエド・ソレンソン氏。米メディアの取材に「視界ゼロの不慣れで特殊な環境で潜らせれば、パニックになる。自分だけでなく救助作業員の死亡事故にもつながる危険がある。現時点では、食料や水、酸素などを運び込む方がいい。少なくとも照明と希望を届けられたいまは、水と食料を十分に与え、暖かくして過ごせるようにするべきだ」と力説した。

 これとは別に、警察高官は13人がいる場所に通じる地表の穴を探すよう捜索隊に命じたと明らかにした。ヘリコプターでつり上げて救助する方法を模索しているとみられるが、現時点で穴は見つかっていない。

 つまりはどの方法も、確実で安心というわけではないということ。乾期が訪れる11月まで洞窟内にいたら、身体的にも精神的にも不調をきたしてしまうだろう。もう一度“奇跡”が起きればいいが…。