東京都の受動喫煙防止条例が27日、成立した。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた小池百合子知事の目玉施策で、喫煙率の低下を背景に評価の声は多いが、売り上げ減少を懸念する飲食店からは戸惑いや反発の声も上がる。
 条例の全面施行は東京大会前の20年4月で、都幹部は「周知期間もあるため、6月の定例会で成立させることが必要だった」と話す。

 しかし、都に「性急な条例制定は避けてほしい」と求めてきた飲食業界には不満が渦巻く。

「受動喫煙防止の必要性は分かるが、13席しかない小さな店。喫煙室を設置するスペースはない」。新宿区で手打ちうどん店を40年近く営む吉田弘司さんはこぼした。従業員を雇わなければ喫煙可能にできるが、「長年働いている従業員に解雇するとは言えない」とうつむいた。

 渋谷区のカフェオーナー松野充さんは約2年前、喫煙可だった店を「加熱式たばこのみ可」にしたところ、売り上げは減ったという。

 加熱式たばこも分煙が必要となる。松野さんは「客から煙への苦情はなく、そこまで規制する必要があるのか。ルールよりマナーの問題だと思う」と首をかしげる。

 一方、理解を示す経営者も。港区で20年以上日本料理店を営む60代女性は「昔は常連客のたばこを用意していたが、今は吸う人自体が減っている」と話す。店では、他の客の同意がないと吸えないようにしているといい「条例は時代の流れに合っているのではないか」と評価した。

 都の推計によると、都内の飲食店の約84%に当たる13万4000軒が規制対象になる。