一度は中止とされた米朝首脳会談について、米ホワイトハウスのサンダース報道官は4日、当初予定通りのシンガポールで、12日午前9時(日本時間午前10時)に始まる予定だと明らかにした。だが中東では、トランプ米大統領が「再びキャンセルだ!」と激怒しそうな事態が起きている。

 3日の朝鮮中央通信によると、シリアのアサド大統領が朝鮮半島の目まぐるしい情勢の変化は金正恩・朝鮮労働党委員長の功績と称賛。「(正恩氏は南北の)朝鮮統一を必ず実現させる」と語った上で「米朝首脳会談の前に、正恩氏と会談したい」と緊急会談を申し込んだという。

 北朝鮮とシリアは長い友好関係を持ち、軍事的な結びつきも知られている。平壌情勢に詳しい関係者は「1970年、正恩氏の祖父、金日成主席とアサド氏の父、ハフェズ・アサド前大統領が会談した。シリアの首都ダマスカスの公園に“金日成”の名前が付いた」と話す。

 内戦が続くシリアには北朝鮮が高度なミサイル関連部品や化学兵器を密輸した疑いがある。

「正恩氏はアサド大統領の要請を受け、北朝鮮の超エリート軍部隊をシリアに何度も派遣し、米軍との交戦に参加したという怪情報も流れた」(同関係者)

 4月14日にトランプ氏は、アサド政権がダマスカス郊外の東グータ地区ドゥーマで化学兵器を使用後、多数の死傷者が出たと判断。英国、フランスと連携し、対抗措置として1年ぶりの軍事行動に踏み切った。

 そんな状況下で、アサド大統領の正恩氏との会談申し入れ。政府関係者は「アサド氏は不安定な国内情勢を考えれば、平壌に行って米朝首脳会談に首を突っ込む余裕があると思えないが、フェイクニュースではない。だが、本当に北朝鮮とシリアの首脳会談が実現するとなれば、トランプ氏は『米朝首脳会談はキャンセルだ!』と言いかねない」と懸念を募らせている。