6月から6%消費税撤廃のマレーシア マハティール新首相の公約は吉と出るか

2018年05月31日 17時00分

KLのシンボル、ペトロナス・ツインタワーも人出が増えるか

【アツいアジアから旬ネエタ直送「亜細亜スポーツ」】】マレーシアで6月から消費税が撤廃される。これは5月の総選挙で、野党連合を率いるマハティール元首相が掲げたマニフェスト。大方の予想に反して勝利し、首相の座に返り咲いた同氏が、まず国民に公約実現を示すというわけだ。

 マレーシアの消費税GST(Goods and Services Tax)は、前ナジブ政権下で2015年4月に導入された。日本同様、すべての物品とサービスに適用され、税率は6%。首都クアラルンプール(KL)に進出している日系企業の社員が語る。

「GST導入で市民の購買力は下がり、ウチは小売りだからもろ直撃。代わりに法人税率がやや下がったり、GSTに対応した会計や税務処理ソフトウエアの購入に政府から補助金が出るなど支援策もあったが、GST不況が続いていた。だから撤廃は大歓迎です」

 地元紙「ザ・スター」は「GST撤廃で商品価格が下がり、市民の購買意欲を刺激することで景気が上がる、と政府はしているが、実際物価に反映されることはないだろう。むしろ値上がりは今まで通り続く」と今後を分析する。背景には通貨リンギットの下落傾向や原油高があるという。

 ただ、庶民にはうれしいニュース。現地在住日本人も「周りのマレーシア人たちは5月は買い控えしていた。その分、6月になったら爆買いが始まるのでは。車など大きな買い物をするという話も聞く。私もパソコンを買い替えようかな」と期待する。

 撤廃を前に国内貿易担当の政府高官は「購入商品の価格から6%引かれているか確認を」と呼び掛けている。今は商品需要が普段より高まるラマダン(断食月)の時期で、生活必需品を中心に不正がないか厳しくチェックするという。撤廃されたGSTの差額をドサクサ紛れで商品に上乗せするような企業については「調査を行う」とも宣言。また卸売市場などでも、食品原材料などの価格を監視する方針だ。

 冷静な意見もある。「歳入が6%減ることにどう対応するのか、新政権は明確に答えてない。去年、GSTによる税収は約440億リンギット(約1兆2000億円)。どう穴埋めするのか」

 また「しょせん選挙に勝つだけの人気取り政策で、先々を考えてない」という声も聞かれる。しかも前ナジブ政権は、約1兆リンギット(約27・5兆円)という膨大な政府債務を残しており、その処理問題も残る。

 来年10月、消費税率が8%から10%に上がる日本からしたらうらやましい話だが、今後マレーシア経済はどう動くか。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、4年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「海外暮らし最強ナビ・アジア編」(辰巳出版)。