「平和地帯」の実態と「板門店宣言」の疑問

2018年05月29日 07時30分

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、26日に行われた韓国の文在寅大統領との南北首脳再会談で、朝鮮半島の非核化へ努力する方針で一致、いったん中止とされた6月12日の米朝首脳会談開催への「確固たる意志」を表明した。朝鮮中央通信が27日伝えた。トランプ米大統領は南北会談を高く評価、米朝間の協議も進んでいるとして、自ら中止を発表したシンガポールでの米朝首脳会談について、予定通りの開催を目指す考えを示した。この会談で再確認された「板門店宣言」について、専門家は奇妙な点を指摘した。

 トランプ氏はホワイトハウスで記者団に、南北会談で「非常に良い対話が行われた」と述べ、朝鮮半島の非核化実現に期待を表明。米朝首脳会談の準備も「うまくいっている」と強調した。

 26日の南北首脳再会談は、軍事境界線がある板門店の北朝鮮側施設「統一閣」で約2時間にわたり行われた。

 文氏は27日記者会見し、正恩氏が25日午後、4月に続く2回目の会談を提案してきたことを明らかにした。正恩氏は朝鮮半島の完全な非核化の意思を重ねて表明しながらも「米国が確実に敵対関係を終息させ、体制を保証するのかを心配しているようだ」と指摘した。

 南北首脳は、非核化と平和体制構築のためのプロセスを中断しないことを確認。4月の南北首脳会談で発表した「板門店宣言」の迅速な履行で一致した。

 板門店宣言は「南北は完全な非核化を通して、核のない朝鮮半島を実現する共通目標を確認した」という内容で、双方が火器を配備している「非武装地帯(DMZ)」を「平和地帯」とすることでも合意した。DMZとは南北軍事境界線を挟んで南北それぞれ2キロにわたる地帯のことだ。

 朝鮮半島事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「板門店宣言の中で奇妙だったのは『DMZ』を『平和地帯』に改称するというもの。改称は自由ですが、韓国側のDMZは朝鮮戦争時、韓国軍が地雷を埋めまくり、その数は1万個ともいわれています。普通、地雷源には味方が誤って触れないように目印をつけるとか、どこに埋めたかの記録を残しておくものですが、韓国軍はその記録を紛失してしまった。さらに、治水の悪さから大雨の土砂と一緒に地雷も流れて、どこにあるか分からない状況です」と語る。

 実際、DMZで作業する韓国兵が誤って地雷を踏み、負傷する事故は過去に何度もあった。但馬氏は「韓国軍は『地雷は北朝鮮軍がDMZにこっそり仕込んだものだ』と言っていましたが、それは事故の補償を曖昧にするためだと激しい非難を浴びた」と話す。

 2015年にはDMZで山火事が発生し、その熱で100個超の地雷が誘爆する大事故があった。同年8月には、20代のハ・ジェホン軍曹が地雷を踏み、両足を失った。軍はハ軍曹の勇気ある行動と名誉の負傷をたたえ、事故現場近くの平和ヌリ公園に軍曹の名を刻んだ「平和の足」なる像を建て、除幕式に車いす姿の軍曹を招待した。

「その像は名前のとおり、巨大な足の形をしています。このセンスは日本人には理解できないですが、制作から設置まで2億ウオン(約2000万円)がかかったそうです」と但馬氏。

 戦闘はなくとも、DMZは韓国で最も危ない場所なのは確かだ。