【アツいアジアから旬ネエタ直送「亜細亜スポーツ」】タイ・バンコク、サイアム地区のランドマーク「マーブンクロンセンター(MBK)」はローカル感、三流感タップリの老舗巨大モール。外国人観光客の定番買い物スポットで、来訪者は1日10万人以上ともいわれる。意外や経営は高級ホテルブランド「デュシット・インターナショナル」で、昔から東急百貨店が入っている。

 その4階はスマホや周辺機器を扱う小ブースが数百店密集し、一大電脳街を形成している。客のお目当ての1つはSIMフリーのスマホだ。プリペイドのSIMカードを入れ替えれば様々な国で使えるから、旅行者や出張者にとってはとても便利。MBKでは安いもので1500バーツ(約5100円)程度から手に入る。中古だとさらに安い。SIMカードも売られ、1週間使い放題のプランで299バーツ(約1000円)が相場。日本では見かけないようなスマホカバーは物珍しいお土産として人気だ。

 日本人だとスマホの修理でやって来る客が断然多い。店の多くが修理工房も兼ね、すぐ直してくれる。訪れた日本人も「修理代がとにかく安い。自分のiPhoneは古くて、バッテリーが劣化して持ちが悪くなったから交換したんだけど、日本の半額以下の600バーツ(約2000円)で替えられた」と大満足だ。

 ホームボタンは400バーツ(約1300円)、液晶ディスプレーは900バーツ(約3000円)で交換できる。いずれも日本よりかなりリーズナブルだが、気になる修理のクオリティーはどうか?

「日本でも公式ショップ以外だと、結構いい加減な店もある。以前、都内のiPhone修理屋でホームボタンを交換したら、代わりに別のボタンの利きが悪くなって返ってきた。カメラ機能の修理をしたら、逆に映りが悪くなったという話も友達から聞いた。そう考えると、MBKの修理屋は割としっかりしている印象」(前出日本人)

 しかも、修理にかかる時間は短く、ブース内にいる職人が10分程度で直してくれる。簡単な英語なら通じるから、タイ出張のたびにスマホをフルメンテナンスする日本人もいるという。

 ただ、MBKは昔から、偽ブランド品でも有名で、当局によるガサ入れもたびたび行われている。昨年は腕時計や化粧品、香水などのニセモノ約7000点が押収された。それだけにスマホショップにも怪しい店が混在し、修理に出すのは完全に自己責任。もし後で不具合があっても補償などは全くなく、事前のバックアップは必須だ。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、4年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「海外暮らし最強ナビ・アジア編」(辰巳出版)。