【取材の裏側 現場ノート】サッカーの欧州各国リーグはシーズンオフとなり、各メディアは連日スター選手たちの移籍に関する話題などを伝えている。ただ今季は11月にカタールW杯が開幕することも各選手の去就決断に大きな影響を与えているようだ。

 イングランド・プレミアリーグのチェルシーからイタリア1部インテルに期限付き移籍したベルギー代表FWロメル・ルカクも、その1人だ。昨季加入したチェルシーではリーグ26試合(先発)出場8得点。出番も激減し、W杯メンバー入りも危うい状況とみられていた。そこで年俸50%ダウン(それでも800万ユーロ=11億3000万円)を受け入れて古巣のインテルに再加入した。

 かつて日本代表の10番を背負ったMF中村俊輔(現J2横浜FC)も2010年南アフリカW杯を控えて所属していたスペイン1部のエスパニョールで苦戦が続き、出場機会が激減すると、同年2月、8年ぶりに古巣のJ1横浜Mへ復帰した。これもW杯メンバー入りを確実にするための決断とみられているように、選手としてのキャリアにも関連している。

 W杯とともに五輪に関しても国内外で同じような事例が多くある一方で好条件のオファーが来てもW杯参戦のために見送るというケースも珍しくないという。選手にとっては、サッカー人生をかけて臨む大舞台。母国を背負って戦うW杯に多くのプレーヤーが特別な思いを持っているのは間違いないだろう。

 公認資格を持つ選手代理人は「いいプレーをしていいクラブに入って高給取りになっても、自分の国の代表としてW杯に出るのは名誉であり、自身のキャリアの集大成だから。その舞台に出るために日々努力しているという選手も多いし、それ(W杯)がモチベーションだという選手もいる。4年に1度だけ…選手によっては一生に1度のチャンスをつかむためには、金だけじゃない部分がある。全員ではないが、そう考える選手は多いはずだよ」と指摘していた。

 欧州の移籍市場はまだ始まったばかり。今夏はW杯イヤーとあって、メンバー入りをにらんだ動きも少なくはない。原則8月末までの間、日本代表イレブンを含めてどんなドラマが起きるのだろうか。

(サッカー担当・三浦憲太郎)