スペイン1部レアル・マドリードは1日(日本時間2日)、今季までイングランド・プレミアリーグのエバートンで監督を務めたカルロ・アンチェロッティ氏(61)が来季の監督に就任すると電撃発表した。契約期間は2024年6月までの3年間。同氏にとっては6季ぶりの復帰となる。

 今季はリーグ戦で2位、欧州チャンピオンズリーグ(CL)も4強止まりで無冠。指揮を執ったジネディーヌ・ジダン氏(48)が、シーズン終了後の5月27日に辞任を表明し、後任探しを進めていた。

 その中で、クラブOBで現在Bチームを率いるラウル・ゴンサレス氏(43)や、今季イタリア1部でインテルを優勝に導きながら監督を辞任したアントニオ・コンテ氏(51)の名も取り沙汰されていたが、レアル側は13―14年シーズンでクラブに10回目の欧州CLタイトルをもたらしたアンチェロッティ氏の実績を重視。交渉開始から1週間でのスピード発表となった。

 アンチェロッティ氏は19年12月にエバートンの監督に就任し、リーグ12位。今季は10位に終わっていた。契約は23年6月まで残っていたが、これを解除。エバートンの公式HPでは「大きなサポートをしてくれたクラブ関係者やファンに感謝したい。このクラブが今後、大きな成功を手にすることを願っている」と述べた。

 レアルはチーム状況もさることながら、4月に突如発表された欧州スーパーリーグ構想の中心的存在ということで、クラブ内外から批判も集まっている。そこにあえて〝火中の栗を拾う〟ために飛び込むアンチェロッティ氏が古巣復帰を決めたのは「思いがけない機会が巡ってきた」とエバートンのHPで記したように、ビッグクラブでの再チャレンジへの強い思いがうかがえる。

 さらに、今回の電撃復帰の裏には別の要素も見え隠れする。アンチェロッティ氏は今年2月、エバートンの自宅で強盗被害に遭い、家族が危険にさらされた。英国では近年、有名サッカー選手や監督をターゲットにした強盗が多発しているだけに、名将は「安全な生活」を求めていた。スペインの治安が格段に良いわけではないが、レアルで指揮を執っていた時代にはこうした危険はなかったことも決断を後押ししたとされている。

 レアルとアンチェロッティ氏が最終的に求めたのは「安定」。ひとまず、来季の巻き返しに向けて再スタートを切った両者に幸せはもたらされるか。