サッカーのアゼルバイジャン1部ネフチ・バクーに入団した元日本代表MF本田圭佑(34)に忍び寄る魔の手とは――。15日にクラブの本拠地バクーで入団会見を開いた本田は目標とする東京五輪代表入りへアピールを狙うが、新天地ではプレーどころではないかもしれない。同国は長年、隣国アルメニアとの紛争が勃発。いまだに戦火はくすぶっており、外国人を標的としたテロや誘拐の危険もある〝超デンジャラス地帯〟だからだ。


 今季終了までの契約を交わした本田は、背番号が日本代表で長年慣れ親しんだ「4」に決定して心機一転、復活を目指すことになった。入団会見では「チャンピオンになるためにベストを尽くす」と、現在リーグ戦で首位に立つチームを8年ぶりの優勝へ導くと力強く宣言。2月に入団したポルトガル1部ポルティモネンセでは登録上の不備から今季のプレーが不可能と判明し約1か月半が経過したが、ようやく去就問題が決着した。

 リーグ戦は残り8試合。本田はシーズン最終盤の少ないチャンスで、目標とする東京五輪代表入りへ向けてアピールすることになる。「簡単な状況ではないが、(森保一)監督に良いプレーを見せて(メンバー入りが)できると思っている」と得意のビッグマウスで自信をみなぎらせた。

 海外7か国目のプレーとなる本田の逆襲に期待が高まるが、その一方で新天地ではピッチ上に専念できるか不安が募る。アゼルバイジャンは極めて政情が不安定だからだ。西側に国境を接するアルメニアと係争地ナゴルノカラバフ地域を巡って数十年にわたり何度も戦争を繰り返しているが、昨年9月に双方の武力衝突により紛争が再燃。2か月近くにわたって停戦と再戦を繰り返した挙げ句、11月にようやく4度目の停戦合意でひとまず戦闘が停止した。

 本田の新たな本拠地となる首都バクーは紛争地から約300キロ離れた東端に位置するが、決して安全とは言えない。在アゼルバイジャン米国大使館は昨年10月末に「首都のバクーで米国人や外国人を標的とするテロ攻撃や誘拐が発生する可能性がある。信頼性の高い報告が上がってきている」と警告を発した。

 今回の紛争では、アルメニア側でテロ組織「クルド労働者党(PKK)」などの関与が指摘されているほか、アゼルバイジャン国内でも2017年末に自爆テロ未遂事件が発生するなどテロ活動が表面化する。テロ組織への警戒が高まっている中で、経済活動が活発で富裕層が多いバクーは特にテロや誘拐の標的となりやすい。サッカー選手として国際的な知名度がある上にビジネスでも頭角を現し、金銭を引き出しやすいと見られがちな〝日本人セレブ〟でもある本田は、まさにテロリストにとって格好のターゲットとなる危険性があるのだ。

 両国の間では停戦後も不穏なムードが続いており、米国誌「フォーリンポリシー」では「停戦の後も衝突が頻発しており、平和は訪れていない。双方の憎しみは募っており、将来的にまた紛争が起きるだろう」と指摘。アルメニア側では政権と軍の対立による内政不安も続き、いつ停戦合意が破られるかわからない状況だ。つまり本田は、軍事衝突とテロの緊張が続く〝超危険地帯〟に足を踏み入れることになるのだ。

 治安の悪さで有名なブラジルで1部ボタフォゴに入団した際には、装甲車を要求したと言われる。今度はそれ以上の警護体制が必要となりそうだが、世界中をさすらう〝オレ様〟は本当に大丈夫なのだろうか。