レジェンドは本当に東京五輪のピッチに立つのか。2大会ぶりに出場する東京五輪で28年ぶりの金メダルを狙うスペインサッカー連盟がオーバーエージ(OA)枠に、J1神戸所属のMFアンドレス・イニエスタ(35)をリストアップし、各方面に波紋を呼んでいる。欧州の第一線を退いて日本でプレーするベテランになぜ白羽の矢が立ったのか。スペインの救世主として急浮上した背景を探った。

 スペイン紙「スポルト」は「東京五輪に招集可能な選手たちの最初のリストを送り終えた。イニエスタとMFダビド・シルバ(34=マンチェスター・シティー)も含まれている」と報道。スペインサッカー連盟が東京五輪の第1次予備登録リストに、すでにOA入りが取り沙汰されていたDFセルヒオラモス(33=レアル・マドリード)、MFジェラール・ピケ(32=バルセロナ)とともにイニエスタの名も入れたのだ。

 スペインは東京五輪予選を兼ねた昨夏のU―21欧州選手権で優勝。“黄金世代”といわれるタレントの宝庫だ。そんなチームに、全盛期を過ぎて日本でプレーするイニエスタがなぜ貴重なOA枠候補に浮上したのか。

「ロンドン五輪では近い世代のメンバーをOAで招集したが、チームが機能しなかった。今度は若手の有望株にカリスマを融合させることで短期決戦を勝ち抜けるチームをつくりたい狙いもあるのでは」と欧州事情に詳しい代理人は指摘する。

 前回スペインが五輪に出場した2012年のロンドン大会では優勝候補筆頭に挙げられながら、初戦の日本戦でまさかの敗戦。そのまま1次リーグで姿を消し、国内で猛批判にさらされた。その際やり玉に挙がったのがOA枠の選手。FWファン・マタ(31)、MFハビ・マルティネス(31)、FWアドリアン・ロペス(32)は当時、ともに五輪世代の1年上と年が近かったため、大舞台での経験不足が敗因として指摘された。そこで今回は、長年スペイン代表を支えた大黒柱で数々のビッグタイトルを手にしてきた大ベテランをOAで入れることで、ピッチ内外でチームマネジメントを機能させようというわけだ。

 また前出の代理人は「クラブとの交渉の面も考えているはず」とも付け加えた。欧州のクラブは派遣義務のない五輪への協力に消極的だが、日本のクラブはこれまで五輪への選手派遣に積極的に協力してきた。しかも今回は地元開催。国を挙げて盛り上げる機運が高まっており、Jクラブが選手の派遣を断りにくい状況になっている。セルヒオラモスやピケは名門でバリバリのレギュラーだけに交渉難航が予想されるが、神戸もイニエスタの供出なら協力してくれると連盟側は踏んでいるのだ。

 もちろん、神戸としても高額な年俸を払っているだけに、派遣義務がない大会でケガでもされたらという心配もある。二つ返事で、というわけにはいかないだろうが、日本でも人気者だけに参加が実現すれば大きな注目を集めるのは必至。今後のスペイン連盟の動きから目が離せない。