名門クラブのジンクスを打ち破れるか。スペイン1部レアル・マドリードに移籍した日本代表MF久保建英(18)は、今後の大活躍が期待される一方で不安もささやかれている。近年Rマドリードが獲得した若手の有望株がいずれも大成しておらず、選手育成の評判はイマイチ。ライバルとなるバルセロナの下部組織で育った久保がフィジカルやスピード重視のクラブスタイルに合うのかも疑問視されているのだ。

 6月29日のJ1FC東京―横浜M戦後に行われた壮行セレモニー。久保は「良いことばかりではなかったですが、自分の力もあり、みんなの力も借りて、東京を背負って世界に羽ばたいていけることを非常に誇らしく思う」とあいさつ。世界屈指の強豪クラブで待ち受けるチャレンジを前に、強い覚悟を口にした。

 Rマドリードは、久保について1年目はBチーム(実質3部)でプレーさせる方針を明言した。まずはレンタルに出さず自クラブで育てる構えだが、そこで気になるのが白い巨人の育成下手だ。「レアルは若手の有望株を獲得しても才能を開花させられないケースばかり。久保は実力はある。ただ、そういう選手が潰れることも多いし、伸びる環境なのかどうか…」とJクラブの強化担当は指摘する。

 2015年1月に、当時ノルウェー1部ストレームスゴトセトで“神童”と騒がれたMFマルティン・ウーデゴールと16歳で6年契約を締結。今回の久保と同じように名だたるビッグクラブによる争奪戦の末に加入したが、Bチームで鳴かず飛ばず。17年にオランダ1部ヘーレンフェインに期限付き移籍するも不振で、今季は同フィテッセへと“たらい回し”になっている。

 同時期にブラジル1部クルゼイロから加入したMFルーカス・シウバは21歳で5年半契約を結ぶも活躍できずに、フランス1部マルセイユ、さらにクルゼイロへとレンタルで放出。10年夏に19歳で6年契約したMFセルヒオ・カナレスもほとんど出場機会がないまま、スペイン1部バレンシアにレンタルで出されて、2年後には退団した。

 金満補強でトップチームの選手層が厚いこともあるが「スピードやフィジカルを重視するチーム方針もあって、スタイルが合わず伸び悩む選手も多い」と別のJクラブ関係者。久保はライバルであるバルセロナの下部組織で、同クラブ特有のテクニックや素早いパス回しを前面に出すプレーを叩き込まれた。それがRマドリードの環境に適しているかは未知数というわけだ。

 そうした不安はある一方、スペイン紙「マルカ」などは30日に、Rマドリードのジネディーヌ・ジダン監督(47)が南米選手権で活躍した久保のパフォーマンスを見て、プレシーズン中にトップチームへの練習参加を希望していると報道。評価は高いだけに、ジンクスをはね返す活躍を見せてほしいところだ。