今夏の移籍は〝タブー〟なのか――。ベルギー1部ゲンクに所属する日本代表MF伊東純也(29)に今夏のステップアップ移籍が浮上している。伊東本人も移籍に前向きな姿勢を示しているが、日本代表として臨むカタールW杯が11月に開幕するため、日本サッカー界からは新天地での〝処遇〟を懸念する声が出ている。

 今季の伊東は14日現在、リーグ戦16アシストをマークし、ランキング1位。今季公式戦では19アシストと結果を残している。そんな伊東にはドイツ1部のレーバークーゼンや同ボルシアMG、スペイン1部セビリア、同レアル・ソシエダード、さらにフランス1部リヨンなど多くのクラブが今夏の獲得に向けて関心を示している

 伊東自身もかねて「良いオファーがあれば」とし「タイミング的にはいいかなと思う」と今シーズン後のステップアップ移籍を視野に入れている中、公認資格を持つ選手代理人は「今季に限らず、ずっと結果も残しているしステップアップするのは良いことじゃないか」としながらも「ただ今年はW杯がある。そこをどういうふうに考えるのか」と指摘した。

 伊東が格上のクラブに移籍すればチーム内競争を勝ち抜かなければならず、ゲンク時代と同じようにスタメンで出られない可能性もある。そうなればコンディションやパフォーマンスにも影響するのは必至。W杯最終予選4試合連続ゴールのような活躍も期待できなくなり、森保ジャパンでサブ降格や最悪の場合は、W杯メンバー落選という事態も想定される。

 もちろん、エース級のプレーで日本をW杯に導いた伊東が万全でなければベスト8を目指す森保ジャパンの戦いにも大きな支障が出るのは避けられない。同代理人は「海外の選手だってW杯のために移籍することもあれば、移籍を見送るケースもある。移籍するのがダメということではないけど、当然リスクも考えているはずだし、あとは(伊東)本人がどう考えるかだろう」と語った。

 実際に、2010年南アフリカW杯の前、スペイン1部エスパニョールで出番が少なくなっていたMF中村俊輔はJ1横浜Mに復帰。12年ロンドン五輪前にはJ1C大阪に所属していたMF清武弘嗣がドイツ1部ニュルンベルクへの移籍を延期するなど、大舞台に出場するため、自身の重要な去就を決断する例は決して珍しくない。

 果たして欧州クラブが熱視線を注いでいる伊東は、W杯は控える来季に向けて、どんな決断を下すのだろうか。