【カナダ・バンクーバー5日(日本時間6日)発】カナダ女子W杯決勝が行われ、前回大会優勝のなでしこジャパンは米国に2―5で敗れ、前回ドイツ大会からの連覇はならなかった。セットプレーなどで前半16分までにMFロイド(32)にハットトリックを許す苦しい展開。完全アウェーのなか、27分にFW大儀見優季(27=ボルフスブルク)が1点を返し、後半にMF澤穂希(36=INAC神戸)が相手オウンゴールを誘発して追い上げたが、2012年ロンドン五輪決勝に続き、大国の壁にはね返される結果となった。

 スタジアムに米国サポーターの歓声と日本サポーターの悲鳴が交錯した。前半だけで米国が4得点。奮闘むなしく、なでしこジャパンの挑戦は準優勝で終わった。

 佐々木則夫監督(57)は準決勝のイングランド戦と同じ先発メンバー11人をピッチに送り出した。なでしこの狙いは、粘り強く守って後半勝負。だが、そのプランは開始3分で崩壊した。

 米国の右CKから出たボールは、日本が想定していなかったグラウンダーのパス。ファーサイドから走り込んだMFロイドに決められ、あっという間に先制を許した。

 前回大会では1点もなかったセットプレーからの失点。今大会初めて先制点を奪われる展開に、なでしこイレブンは浮足立った。2分後には自陣深い位置からのFKをまたもロイドに合わせられて2失点目。さらに14分には右からのクロスをDF岩清水梓(28=日テレ)がクリアしきれず、ゴール前の浮き球をMFホリデー(27)に右足ボレーで決められた。

 流れもスタジアムの雰囲気も完全に米国のペース。混乱するなでしこジャパンは16分、中盤でパスをカットされると、ハーフラインからMFロイドがロングシュート。前に出ていたGK海堀あゆみ(28=INAC神戸)が懸命に戻り、右手に当てたが無情にもボールはゴールラインを越えた。

 ロイドの16分間ハットトリックを含め、まさかの4失点。試合中に円陣を組んだなでしこはポジション変更。ボランチのMF宇津木瑠美(26=モンペリエ)を左サイドバックに、左サイドバックのDF鮫島彩(28=INAC神戸)を左の攻撃的MFへ、宮間をボランチに下げた。

 これでリズムを少しずつ取り戻すと、27分に逆襲。右MF川澄奈穂美(29=INAC神戸)からのパスを受けたFW大儀見優季がDFを背負いながら巧みに反転し、左足シュートで1点を返した。米国の連続無失点記録は540分で止まり、07年中国大会でドイツが樹立した記録の更新を阻止する意地を見せた。

 得点を取らなければならない日本は33分、岩清水に代えてMF澤穂希を早くも投入。失点に絡んだ岩清水はベンチで号泣した。39分には川澄を下げて、FW菅沢優衣香(24=千葉)を入れた。

 前半だけで2人の交代というスクランブル采配が実ったのは後半7分。左サイドからのFKにゴール前で競り合った澤が米国DFジョンストン(23)のオウンゴールを誘って2点目。だがその2分後、またもセットプレーのこぼれ球をMFヒース(27)に決められて5点目を奪われた。

 15分にFW岩渕真奈(22=バイエルン・ミュンヘン)を投入。28分には佐々木監督の指示で3バックに変え、最後の反撃に出た。米国も34分にFWワンバック(35)を投入。38分にはワンバックの突破をファウルで止めた澤がイエローカード。最後まで勝利への執念を捨てなかった。

 3分のアディショナルタイムで懸命に前線にボールを運んだが、無情のタイムアップ。なでしこに勝利の女神はほほ笑まなかった。