オシム氏「墓場まで持っていく」発言15年目の真相〝腹心〟が会見中に号泣したのは…

2022年04月05日 14時00分

オシム監督(右)の会見中に泣きだした千田通訳(06年9月=東スポWeb)
オシム監督(右)の会見中に泣きだした千田通訳(06年9月=東スポWeb)

【多事蹴論(35)】日本代表イビチャ・オシム監督の“腹心”が「墓場まで持っていく」と語った事件の真相とは――。1分け2敗と惨敗した2006年ドイツW杯後、日本代表はJ1千葉を率いていたイビチャ・オシム氏が新監督に就任し、07年7月に東南アジア4か国共催となったアジアカップに臨んだ。

 その1次リーグ初戦カタール戦で、日本はFW高原直泰のゴールで先制するも、後半43分に自陣ゴール前でDF阿部勇樹が不用意なファウルでFKを与える大ピンチ。これを直接決められた日本は痛恨のドロー発進となった。この失態に大激怒したオシム監督はロッカーに戻ると「お前らはアマチュア以下だ!」とイレブンに罵声を浴びせ、徹底糾弾したという。

 特に千葉時代の教え子で、失点の原因をつくった阿部に容赦ない言葉で詰め寄った。するとオシム監督のけんまくと、イレブンに対する厳しい言葉を訳していた通訳の千田善氏が突然、号泣。怒り狂ったオシム監督が通訳にまで罵詈雑言で当たり散らしたとの説や通訳がイレブンへの指示を間違えて伝えていたため、オシム監督の逆鱗に触れたとも推測されていた。日本サッカー協会は「まだ初戦で問題ない。あくまでチーム内のこと」と号泣事件に言及しなかった。

 その試合後、号泣した千田通訳は「何が起こったのかは言えない。墓場まで持っていく」と封印を宣言。チーム内にオシム監督の母国語セルボ・クロアチア語を理解するのは千田通訳だけとあって号泣事件の真相は闇の中となった。そして初戦でつまずいた日本代表は快進撃し、3位決定戦で宿敵・韓国にPK戦の末に敗れたもののベスト4入りし、前回王者の面目を保った。

 千田通訳はその後も事件について語ることはなかった中、オシム監督は07年11月に千葉県内の自宅でイングランド・プレミアリーグを観戦中に急性脳梗塞で倒れて退任。リハビリを終えて09年1月に居住地オーストリアへ帰国することになった。阿部勇樹や千田通訳も成田空港で老将を見送った後、本紙記者は千田通訳に「あのときの…」と質問すると、声を絞り出すように“真相”を語ってくれた。

「当時は『墓場まで持っていく』と言いましたが、たいしたことではないんです。オシムさんが暴言を吐いたとも言われていますが“オレは命をかけて戦っているんだ”と話し始めて“1日かけてミルクをしぼったのに最後ですべてこぼしてしまった。お前らはそういうことをしてしまったんだ”と話していたんです。それを聞いていたら私が大会までのこと(準備など)を思い出し、思わず泣いてしまったんです。別にオシムさんから“お前が辞めろ”とか言われたわけでもないし、恥ずかしいから言わなかっただけ」と明かした。

 ちなみに千田通訳によると、カタール戦で号泣したことに、オシム監督からは「何でお前が泣くんだ? 泣いたから、恥ずかしい姿が世界中に打電されただろう」との理由で叱責されたそうだ。

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