森保ジャパンを救ったMF久保建英(20=レアル・マドリード)が持つ〝魔法の左足〟の秘密とは――。東京五輪サッカー男子代表は22日に行われた1次リーグA組初戦の南アフリカ戦(味スタ)で1―0と快勝した。苦しい展開を打破して日本を白星スタートへと導いた久保の左足シュート。最大の武器の秘密を先輩で元日本代表の石川直宏FC東京クラブコミュニケーター(40)が明かした。

 日本に歓喜の瞬間をもたらしたのは、やはりこの男だった。圧倒的に攻め込みながら決定力を欠いて0―0のまま迎えた後半26分、MF田中碧(デュッセルドルフ)からのロングパスを右サイドで受けた久保は、相手DFをドリブルでかわしてすぐさま左足を一閃。強烈なシュートは、左ポストを直撃してそのままゴールへと吸い込まれた。

〝日本の至宝〟と呼ばれる実力を地元開催の五輪でいきなり披露。久保は「今日は決めるとしたら自分しかいないと言い聞かせていた。最後は自分が差を出せてよかった。あのゴールはボールを持ったら切り返してファーサイドを狙おうと思っていた」。森保ジャパンを勝利に導く会心の一撃に喜びを爆発させた。

 日本にとってまさに最強兵器とも言うべき〝魔法の左足〟。FC東京時代にともに汗を流した石川氏は、その破壊力をこう分析する。

「彼の特徴は、ボールを足で触りながらずっと相手(DF)、GKの立ち位置、ゴールを見つつ、最後に振り抜く。ヘッドダウン(ボールを見るために頭を下げる)した時にDFはボールをかっさらいに行ったりするので、DFやGKからしたらいきなりシュートを打たれる感覚になる」

 一般的に選手はドリブルやシュートを打つ際にボールを確認するために目線が下がりがちだが、久保は驚異的なボールタッチの感覚からボールの位置を意識することなくシュートを打てるため、相手はタイミングを取りづらく対応がどうしてもひと呼吸遅れてしまうというわけだ。まさにこの日のシュートは久保の技術とセンスが詰まった一発だった。

 そして、大舞台で見事に決めきった勝負強さには伏線もあった。久保は5月16日のレバンテ戦で、昨季所属したヘタフェを1部残留へと導く決勝弾を放った。石川氏は「あのシュートもすごかった。ボールを見ていなかった。僕が想像できないような環境でやっている中で(進化が)凝縮されている」と指摘。シュートを放った位置や状況こそ異なるが、最大の特長が表現された点は共通している。進化を遂げたシュート技術の良いイメージを持って今大会に臨めているのだ。

 悲願の金メダル獲得へ踏み出した第一歩。1次リーグ第2戦のメキシコ戦(25日、埼スタ)は、より相手が強化されるが、森保ジャパンは頼もしい〝武器〟とともに勝利を目指す。