前代未聞の〝サッカー兄弟マッチ〟の影響とは――。日本代表(A代表)と東京五輪に臨むU―24日本代表による強化試合(3日、札幌)は、A代表が3―0と快勝して貫禄を見せた。日本代表史上初となる〝禁断の一戦〟は、新型コロナウイルスの影響でA代表の国際親善試合ジャマイカ戦が中止となったことで、急きょ組まれた。その一方で、注目マッチは今後の両代表チームに「功罪」をもたらす結果にもなった。

 ついに実現した兄弟マッチは〝兄貴分〟のA代表が〝弟分〟の五輪代表に格の違いを示し、MF橋本拳人(27=ロストフ)、MF鎌田大地(24=Eフランクフルト)、FW浅野拓磨(26)のゴールで完勝した。

 両チームの兼任監督でこの日はA代表を指揮した森保一監督(52)は「プレッシャーはA代表の選手にしかないと思うが、彼らは常に高い基準を持ってやるべき最善の準備をして、勝利にこだわって試合をした」と、日本の最高峰に位置するA代表のパフォーマンスを高く評価した。

 本来Aマッチで対戦するはずだったジャマイカ代表が渡航時における新型コロナウイルスの陰性証明書の不備で試合が中止となり、急きょ組まれた一戦。A代表の勝利で幕を閉じたが、代表史上初のドリームマッチは今後に様々な影響をもたらしそうだ。

 まず気がかりなのが、東京五輪の1次リーグ初戦で激突する南アフリカを想定したU―24ガーナ代表戦(5日、福岡)が中1日での過密日程となる点だ。Jクラブ関係者は「五輪の初戦は重要で仮想南アフリカのガーナ戦は万全の状態、ベストメンバーで臨みたかったはず。それが突然A代表との試合を強いられたことで、本番に向けて狂いが生じる可能性もある」と不安視した。

 中1日では選手を振り分けなければならず、この日のU―24日本代表はオーバーエージ枠のDF吉田麻也(32=サンプドリア)、DF酒井宏樹(31=マルセイユ)、MF遠藤航(28=シュツットガルト)を温存し、〝至宝〟MF久保建英(20=ヘタフェ)らをスタメン起用。横内昭展監督(53)は試合後に「やっぱり中1日、しかも移動もあるので選手の疲労も考慮して考えている」と悩ましい起用となったことを吐露した。

 また、注目を集める久保の今後にも影響が出かねない。同関係者は「A代表でなかなか出場機会が増えない久保にとっては、評価を一変させる大きなチャンス。ただ、ダメならレギュラーは逆に遠のくのでは」と指摘。今秋から始まるアジア最終予選、そして来年のカタールW杯へ向けて久保は下克上を狙い、積極的に攻撃には絡んだが、肝心のゴールは奪えなかった。その一方、A代表でポジションを争うMF鎌田がゴールを挙げるなどライバルたちは活躍。久保のレギュラー取りはイバラの道であることが浮き彫りになった。

 とはいえ、日本代表の将来を考えればメリットもゼロではない。これまで兄弟マッチはA代表が負けた場合のリスクばかりが強調され、なかなか実現しなかった。そうした経緯があったにもかかわらず、森保監督が兼任のメリットを生かして歴史の扉を開いた。日本サッカー協会の田嶋幸三会長(63)も「お互いにとってプラスになる」とその決断を高く評価しており、今後の代表強化において新たな選択肢を提示した。

 様々な要素が絡んだ禁断の兄弟マッチ。A代表が勝てばそれでよし…というわけにはいかなかったことは確かだろう。