まだまだやれることはある! 元日本代表MF本田圭佑(34)が、大叔父で1964年東京五輪のカヌー競技に出場した大三郎氏(86)から東京五輪の〝緊急参戦〟を命じられた。すでにオーバーエージ(OA)枠の3選手は決定済みで事実上出場の可能性は絶たれたばかりだが、大三郎氏の意図はどこにあるのか。新型コロナウイルスの影響で開催危機を迎えている東京五輪へのスタンスも含めて熱弁を振るった。

 2018年ロシアW杯後にA代表から引退した本田は、次のターゲットをOA枠での東京五輪出場に設定。事あるごとに目標を公言してきたが、東京五輪を指揮する森保一監督(52)の選択は、DF吉田麻也(32=サンプドリア)、DF酒井宏樹(31=マルセイユ)、MF遠藤航(28=シュツットガルト)となり、東京五輪のピッチ立つ可能性はほぼ消滅した。

 本人は自身が運営するプレミアム音声サービスの「Now Voice」で「森保さんが呼びたいOAがしっかり決まっているなら、僕が入る余地はないんだろうなと正直、思っている」と素直に現実を受け入れた。その一方で「五輪に勝つかどうかは、精神的なところとか、そういう部分が必要になる。戦いはピッチ外から始まっている。他のOA(選手)にはなくて、僕にあるのはそこ」と自己アピールしていた。

 このコメントを知ってか知らずか、大三郎氏は本田の五輪参戦について「若い連中が新しいサッカー文化をつくるお膳立てをしてあげないといけない。選手として出られなくても、アドバイスをしたり、相談相手になるとかやれることはいくらでもある」と持論を展開。ただ、選手としての出場には「親族としてなら出てもらいたい気持ちはあるが、圭佑が出たら負けるから出ない方がいい。僕が日本の監督だったら使わない」と厳しいジャッジを下した。

 本人がアピールしていたように、プレーをしなくても、大舞台で強さを発揮してきた本田ならではの「勝利のメンタル」を伝授することは可能だろう。もちろん、今から森保ジャパン入閣は難しくても〝外部講師〟なら実現のハードルは高くない。日本サッカー協会は、元日本代表FW中山雅史氏(53)らOBを世代別代表合宿に派遣して経験談や技術指導をしてもらう試みを実施したこともあり、本田もその資格は十分だ。

 大三郎氏の提案が本番で実行に移されるか気になるところだが、コロナ禍で世論は五輪開催そのものに「ノー」を突きつけている。そんな状況でも、次のように力説した。「64年の東京五輪は戦争からここまで復旧した日本人の心を世界に見せようということだった。コロナ禍の今度は完璧な対策をしてやってみれば、1世紀たって我々が世の中にいなくなったときの人々がきっと理解してくれる。やれば反省はたくさん出てくるけど、そのこと自体がレガシー。いいことばかりがレガシーではない」

 大三郎氏は、規模縮小や無観客などあらゆる手段を使ってでも開催を望んでいる。本田の緊急出動も含めて、東京五輪はどのような結末を迎えるのか。 

☆ほんだ・だいさぶろう=1935年2月17日生まれ。熊本県出身。日本体育大学卒。64年東京五輪前にそれまで打ち込んできたハンドボールの実施が見送られたため、カヌー競技で東京五輪出場。息子の多聞はレスリング選手として3度(84、88、92年)の五輪に出場。現在は神奈川・三浦市のマホロバ・ホンダカヌースクールの代表を務める。サッカー元日本代表の圭佑は兄の孫。