サッカーの日韓戦(25日、日産)が逆風の中で行われようとしている。21日の首都圏での新型コロナウイルスの緊急事態宣言解除後、初となる国際試合としても注目を集める中、日本サッカー協会は18日に日韓戦とカタールW杯アジア2次予選モンゴル戦(30日、フクアリ)に臨む日本代表メンバー23人を発表。ライバル対決にあたって日韓両国内で感染リスクが指摘されるが、実際に感染者が出て試合開催に影響が出れば東京五輪への影響も甚大だ。

 この日の会見冒頭で森保一監督(52)は「コロナ禍にあって我々の活動が日本国民にとってすべての方が必要かというと、そうでない方がたくさんいることも理解している」と厳粛な表情で語った。指揮官が言及したように、日本は新型コロナの感染状況が予断を許さない状況。感染者数が下げ止まりして変異株を中心に再増加の傾向が見られ、専門家から21日の緊急事態宣言解除後、感染拡大のリバウンドを懸念する声が出ているほどだ。

 そうした状況で日本政府は、宣言解除後も新規外国人の入国停止を継続するが、森保ジャパンの相手国は特例措置での入国が認められた。受け入れる日本サッカー協会は外国チームの外部との接触を一切遮断する徹底した感染防止対策を準備。田嶋幸三会長(63)は「東京五輪のテストイベントになる」と今回の活動を“プレ五輪”と位置付け、是が非でも五輪を開催したい政府の全面バックアップを得て開催決定にこぎつけた。

 だからこそ、感染者が続出する事態が起きればその影響は、サッカー界にとどまらない。韓国ではコロナ禍での日本遠征リスクが叫ばれており、日韓戦の開催中止を求める国民請願が大統領府に出され、韓国サッカー協会にも批判が殺到している。

 かねて韓国では「東京五輪の開催中止」を求める声が強く、日本遠征でクラスターが発生すれば開催を後押しした政府も巻き込んで猛烈な日本バッシングが起きることは確実。そうした状況を海外メディアが見過ごすはずがなく、東京五輪中止の声が世界中で一気に高まるのは必至だ。Jクラブ関係者からも「今の状況でもしものことがあれば、協会はもちろん政府もとてつもない批判を浴びるだろう。東京五輪はもう無理だという声も強くなるかもしれない。大きな賭けになるのでは…」と危惧する声が上がった。

 日本でもコロナ禍での国際試合の開催を疑問視する世論は強く、日本協会の須原清貴専務理事(54)は「いろいろな声が届いているのは事実で、我々も受け止めている」。それでも「安心、安全を可能な限り担保して実施する。万が一のことが起きないように徹底的な対策を取るが、陽性者や濃厚接触者は活動から外れてもらう必要がある。試合が成立するかどうかは、その都度判断していく」と迅速な対応で試合開催は“死守”する構えだ。