サッカー日本代表のエースFW本田圭佑(27=ACミラン)が21日、イタリアでのシーズンを終えて帰国した。次はいよいよブラジルW杯に出陣。23日から代表の鹿児島合宿に合流して最後の準備に入る予定だが、エースはある決心を胸に秘めている。チームメートたちが興味津々となっている「ACミラン」に関する話題をシャットアウトするというのだ。その真意とは…。

 本田が黄色のジャケット、迷彩柄パンツというド派手ないでたちで到着ロビーに姿を見せると、待ち受けた約100人のファンから大歓声が上がった。「押さないで!」と警備員の怒号が飛び交い一時は騒然となったが、本人は至って冷静。報道陣の問いかけに「おつかれさまです」とだけ答え、迎えの車に乗り込んだ。

 23日からは鹿児島で合宿中の日本代表に合流。胸の奥にはこんな決意がある。親しい関係者によれば「みんなミランの話を聞きたがるだろうけど、圭佑はその話はしないと決めている。周りのことを考えると、自分がミランのことばかり話すのはプラスにならないと考えているようだ」

 1月から世界屈指の名門クラブの一員となった。元オランダ代表のクラレンス・セードルフ監督(38)をはじめ、元ブラジル代表のエースMFカカ(32)や怪物ストライカーのイタリア代表FWマリオ・バロテッリ(23)ら世界的なスターの仲間入り。また、練習やコンディション調整の方法など、名門クラブ伝統の“ミランメソッド”も体験している。代表イレブンからは、こんなすごい経験をしてきた本田から「話を聞いてみたい」と言う声が後を絶たなかった。

 しかし、エースはミランに関することは答える気がないという。その理由はザックジャパンの士気に影響するからだ。

 代表に参加中の本田がミランの経験談を話せば、なかには「自慢話」と受け取る選手がいてもおかしくない。ともすれば周囲に「浮かれている」という印象を与えかねない。また、ザックジャパンではDF長友佑都(27)がインテル(イタリア)で、FW香川真司(25)はマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)でプレー。すでにビッグクラブの一員がいる。本田自身がミランで結果を残せていないこともあって「ミランの10番」を前面に出すことは、チームを結束させる上で得策ではないと判断したようだ。

 G大阪ジュニアユース時代の親友で同級生の松岡康暢氏(28=現G大阪ジュニアユースコーチ)も「世界で活躍する選手がスタメンにも多いし、ミランのことをあえて言う必要はない。個々が理解しているから、あとは本番に“背中で”(見せて)いい方向へ…と思っているのでは」とエースの意図を代弁した。

 ここから目標のW杯優勝へ日本代表に集中していくためにも「ミラン」の3文字を封印。細かな“気遣い”と固い決意を持ってザックジャパンに合流する。