森保ジャパンで10番を背負うMF南野拓実(25=リバプール)が、ピッチ内外で進化を見せている。新型コロナウイルスの影響で約1年ぶりの代表戦となったカメルーン戦(9日)では攻撃の中心として存在感を発揮したが、MF久保建英(19=ビリャレアル)との〝共闘〟について語るなど日本代表の大黒柱として意識の変化も出てきた。その背景にあるものとは――。

 オンラインで取材に応じた南野が次戦のコートジボワール戦(13日)に向けて強調したのが、後輩を生かす意識だ。

 まずは急成長中のMF久保について「ボールを受けて1人、2人はがせて前を向けるし、シャドーに入ったときはすごく攻撃を活性化させる」と高く評価。その上で「プレー時間が長くなっていけば絶対にチームにとってプラス。コミュニケーションを取って、お互いの良さを生かしていければいい」と〝日本の至宝〟の長所を引き出し、チームの攻撃力アップにつなげる考えだ。

 南野のそうした姿勢は久保に限らず「タケだけじゃなくて、MF三好(康児=23、アントワープ)とか(MF鎌田)大地(24=Eフランクフルト)とかレベルの高い選手が揃っているので、誰が入っても特長を生かしてプレーできるようにと練習でも意識している」と後輩の力を伸ばそうという意識を前面に出しているのだ。

 これまでの南野は森保ジャパンでレギュラーの地位を確立しても、チームメートを言葉で引っ張るより〝背中で見せる〟タイプだった。それが積極的に久保ら年下の選手の能力を引き出そうという意識に変化した。いったいなぜか。

 一つはリバプールでの好調があるだろう。昨季はシーズン途中の加入で出番も少なかったが、エジプト代表FWモハメド・サラー(28)、セネガル代表FWサディオ・マネ(28)、ブラジル代表FWロベルト・フィルミノ(29)ら一流選手とレギュラー争いを展開。今季初戦となったコミュニティ・シールドのアーセナル戦で移籍後初ゴールを挙げるなど成長し、精神面も世界基準になった。元日本代表MF前園真聖氏(46)も「結果を出し、自信を得たことは大きい」と話していた。

 さらには日本代表でエースナンバーを背負う使命感だ。かつて背番号10を担ったMF名波浩は現役時代に「若い選手が輝けばオレは黒子でいい」と話し、当時若手だったMF中村俊輔らのサポートに徹してチーム全体のレベルアップに目を向けた。南野も10番として求められる役割を実戦しているわけだ。

 エースの貫禄が漂ってきたが、周囲へのサポートはもちろん、自らのプレーで日本を勝利に導かなければならない。出場連続得点こそ「5」で途切れたものの、待望の2020年代表初ゴールを期待したい。