2011年ドイツ女子W杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダルなど数々の金字塔を打ち立てた元なでしこジャパンのFW大野忍(36)が12日、東京都内で笑顔の引退会見を行った。

 なでしこリーグ史上最多の182ゴールを挙げたストライカーは「寂しさはあるけど、それをしっかり笑顔に変えて(会見を)やろう」と涙とは無縁の舞台。昨年10月くらいから、選手でありながら指導者目線になっていた自分に気づき、今年1月に日本サッカー協会公認B級ライセンスを取得したこともあって「いいタイミングかな」と引退の決断をした。

 この日の朝には、なでしこジャパンで指導を仰いだ佐々木則夫氏にも電話で報告。「電話番号を知らなかったので連絡が遅くなってしまいました、という分かりやすいウソをつき、これからノリさんのサッカー教室などのお手伝いもさせてくださいと、ゴマをすっておきました」と師弟関係が健在であることをアピール。先に引退した澤穂希さんにも前日に連絡したといい「本当は会見とかやりたくないんですって話したら『しっかり話してらっしゃい』と言われたので、ちゃんと会見することにしました」と集まったメディアを笑わせた。

 大野のモットーは「苦しい時こそ笑おう」。ムードメーカーとして、なでしこジャパンを引っ張ってきた。その思いを今後は指導者として子供たちに伝えていく考えだ。

「サッカーを楽しむことにこだわってほしい。身長が低いとか、そういうことを不利だと思わず、それを強みとする。技術だけでなく、メンタルの強さ、礼儀とかが、ちゃんとできる選手を育てたい」

 目前に東京五輪が迫るが、なでしこジャパンの現状は決して明るくない。それでも「選手には胸を張ってもらいたい。あの舞台に立てるなんて、うらやましくて仕方がない。プレッシャーと思わないでほしい」と選手たちにエール。3月26日から始まる国内の聖火リレーでは、なでしこの優勝メンバーとともに栄えある第1走者の大役を担う。「名誉なことなので、しっかり走りたい。最近は昼間からビールとか飲んじゃってるけど、トレーニングもちゃんとやって、なでしこをもう一回アピールしたい」と目を輝かせた。