なでしこ 東京五輪「金」への2大テーマが新局面

2019年12月12日 16時30分

【韓国・釜山発】東京五輪の金メダル取りへ“2大テーマ”の行方は――。東アジアE―1選手権初戦の台湾戦で9―0と圧勝したなでしこジャパンは、初めて主将を任されたFW岩渕真奈(26=INAC神戸)が先制弾を含む2得点1アシストの活躍で責任を果たした。今夏のフランスW杯メンバーから落選して波紋を呼んだFW田中美南(25=日テレ)も、2得点を挙げて猛アピール。高倉麻子監督(51)の思惑も見え隠れする中、来夏の本番に向けたサバイバルが激化しそうだ。

 欧州組不在の今大会、なでしこジャパンには様々なテーマがあった。もちろん、16強止まりだった6月のフランスW杯からの戦力の底上げが最重要課題。そんな中で注目されたのが、現在主将を務めるDF熊谷紗希(29=リヨン)に代わる候補探し。大役を任された岩渕は、先制ミドル弾を含む2得点を挙げてフル出場。大事な開幕戦でチームを力強くけん引してみせた。

 高倉監督は“岩渕主将”について「今(大会)のチームを見たら彼女がやるのが当たり前」とし「そろそろやりなさい」とキャプテンマークを渡した。岩渕にもリーダーの自覚が芽生え、代表で初めて主将として臨む試合を前に澤穂希さん(41)や宮間あやさん(34)といった歴代の主将に連絡を取った。そのうえでイレブンに「楽しんで。自分を出して。正解、不正解はないから声を出して。ミスは全員でカバーできるから」とゲキを飛ばし、見事なリーダーシップを発揮した。

 今大会は熊谷不在とはいえ、岩渕は単なる代役というわけではない。高倉監督は大会前に「このチームが世界で勝っていくためには新しい強いリーダーが必要。今回熊谷はいないが、チームの軸となる、オンとオフ含めて発信する選手が出てきてほしい」と新たなリーダーの誕生を切望。来夏の東京五輪で世界の頂点を目指すため、主将交代や複数主将制などのプランが検討されることになる。チームの行方を左右する“主将問題”が浮き彫りになる中、岩渕の台頭は大きな意味を持ちそうだ。

 そして、もう一つの重要なテーマが田中の処遇だ。なでしこリーグで4年連続得点王を獲得し、2年連続MVPに選出された実力者だが、フランスW杯ではまさかの落選。指揮官は今後もW杯メンバーを中心に据える方針で、東京五輪に向けて田中は安閑としてはいられない立場だ。

 そんな微妙な状況で迎えた台湾戦は先発出場。所属の日テレはアジア女子クラブ選手権出場で過密日程となっており、W杯で主力だった同僚のMF長谷川唯(22)やMF籾木結花(23)が温存されたことを見ても、指揮官から危機意識を植えつけられているのが分かる。それだけに、相手との実力差がはっきりしていたとはいえ、即座に結果を出したのは収穫だった。

 東京五輪前、最後となる公式大会の開幕戦で存在感を発揮した田中は「決めきるところは大きな大会に向けて大事。あとは信頼関係が大事。自分が前にいることによって、スタッフからも選手からも信頼してもらえる選手になりたい」と生き残りへ悲壮な決意。金メダルに向けた2大テーマは今大会で新たな局面を迎える。

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