森保ジャパンが“日本の至宝”を徹底ケアする。スペイン1部の名門レアル・マドリードに加入した日本代表MF久保建英(18)は、来夏の東京五輪でエースとして期待されているが、欧州各クラブはかねて五輪への選手派遣に消極的で、本大会の参戦は不透明な状況だ。そこで日本サッカー協会は、欧州駐在の元日本代表MF藤田俊哉氏(47)を“久保担当”に指名し、世界屈指のメガクラブと関係強化を図る。

 9日に開かれた技術委員会では、1年後に迫った東京五輪に向けた議論も行われた。
 2008年北京、12年ロンドン五輪では国際サッカー連盟(FIFA)がクラブに選手派遣を義務づけたが、16年リオデジャネイロ五輪は義務がなくなった。協会の関塚隆技術委員長(58)は、東京五輪の選手招集についてFIFAに確認。「今のところ(クラブ側に派遣の義務は)ない」とし、拘束力がない中でのメンバー編成を強いられそうだ。

 中でも懸念されるのは、五輪のエース候補で今夏にRマドリード入りした久保の処遇だ。欧州クラブ、特に強豪になるほど五輪への選手派遣には消極的。久保の招集はチームの根幹に関わるだけに、協会は今後クラブ側とタフな交渉を強いられる。関塚委員長も「個人名は別として、ここでまた海外に挑戦する選手が増えてきた。しっかりと把握しながら調整を取り組んでいかなきゃいけない人員が増えた」と苦渋の表情を浮かべる。

 そこで鍵を握るのが、昨年9月から技術委員会の「欧州駐在強化部員」となった藤田氏だ。欧州でプレーする日本人選手たちのサポートに加えてA代表や各年代別代表チームへの選手派遣について所属クラブとの交渉や調整を行うのが、主な役割とされる。

 関塚委員長は「(自身が)単発的に行くより、藤田くんが定期的に行きながら交渉で相手の顔を見られる関係づくりのためにも、昨年から取り組んでもらっている。それが今後どのように幅を広げていくのか。我々は考えていかないといけない」と語り、今後は藤田氏に久保とRマドリードを徹底的にマークしてもらう方針だという。

 世界的ビッグクラブとの関係構築は重責になるが、藤田氏はまさに適任だろう。現役時代は日本代表として活躍し、オランダ1部ユトレヒトでもプレー。引退後も欧州クラブでコーチとして指導した経験に加え、イングランド・チャンピオンシップ(2部)リーズでは強化担当も務めた。独自のネットワークもあり、協会幹部も「俊哉は営業がうまい」と、その交渉術には期待を寄せている。

 もちろん、久保だけではなく、五輪世代のオランダ1部フローニンゲンのMF堂安律(21)とMF板倉滉(22)、ベルギー1部シントトロイデンからイタリア1部ボローニャに移籍したDF冨安健洋(20)、ドイツ2部ハンブルガーSVのMF伊藤達哉(22)らもカバーするが、五輪メダル獲得に極めて重要なミッションになりそうだ。