【なでしこジャパンの暗闘 1】フランス女子W杯ベスト16で敗退したなでしこジャパンの舞台裏でいったい何が起きていたのか。東京五輪に向けて不安が募る中、短期連載「なでしこジャパンの暗闘」(全3回)で徹底検証。第1回では高倉麻子監督(51)の苦悩に迫った。

 3年前、日本がリオデジャネイロ五輪出場を逃した後に就任した高倉監督は、周囲にこんな言葉を漏らしたという。「どうして、ここだけこんなに人がいないの?」

 自身が年代別代表チームを率いたため、若手のプレースタイルや細かな性格は把握済み。2011年ドイツW杯優勝メンバーとの関係も良好で、日本の力を再結集すれば、世界と互角に戦えると確信していた。そんな中で「空白の世代」があることに気づいた。

 それが、12年に日本開催となったU―20女子W杯で3位となった、いわゆる「ヤングなでしこ」たちだ。1992~94年生まれの世代でMF田中陽子(25=ノジマステラ神奈川相模原)、MF猶本光(25=フライブルク)、FW田中美南(25=日テレ)らを擁し、大躍進。国内外で大きな話題と期待を集めた。

 だが、その後はA代表で主力になった選手は皆無。指揮官の耳には“悪評”ばかりが入ってきた。「Aは全然練習しなくなったとか、Bは高倉監督の視察があるときだけ本気でやるとか。体調管理ができない選手の話、チームプレーがおろそかになった選手の話もあった」と女子委員会関係者は当時を振り返った。

 フランスW杯でも「ヤンなで」世代はFW横山久美(25=長野)とGK池田咲紀子(26=浦和)だけ。FW岩渕真奈(26=INAC神戸)は当時からA代表の常連で絡みはないが、この世代間のゆがみがチームを直撃した。ベテランと若手の融合を目指したものの「ヤンなで」世代が少なく“橋渡し”はうまくいかなかった。主将のDF熊谷紗希(28=リヨン)も「チームをまとめるという面で、なかなかみんなが同じ方向を向くようにはならなかった」と告白した。

 この“空白”は高倉監督にとっても誤算となったが、今回のW杯を目前に、もう一つの嘆きを口にすることになる。