“天才少年”の周辺が慌ただしくなってきた。国際親善試合トリニダード・トバゴ戦(5日、豊田)、エルサルバドル戦(9日、宮城)に臨む日本代表は2日、愛知・豊田市内で始動し、初招集のMF久保建英(17=FC東京)も合流した。4日に18歳の誕生日を迎えて、海外移籍が可能となる久保には欧州ビッグクラブから“オファー”が殺到するが、日本サッカー界では今夏の海外進出について「延期」を求める声が高まっている。

 今季J1で首位に立つFC東京で主力選手に成長した久保には、多くの欧州クラブが獲得への興味を示している。

 4月にスペイン紙「マルカ」が同国1部レアル・マドリードと、フランス1部パリ・サンジェルマンが久保の代理人と接触したと報道。1日には地元紙「ムンド・デポルティボ」が、2015年まで下部組織に所属したスペイン1部バルセロナと久保側が4度の交渉を行っていたと報じた。今後も各クラブが獲得合戦を繰り広げるのは間違いなさそうだ。

 しかもA代表として参加する国際親善試合と南米選手権(14日開幕、ブラジル)には欧州クラブのスカウトたちも集結。それだけに活躍次第ではマンチェスター・シティーをはじめとするイングランド勢やドイツ勢も獲得レースへの参戦が見込まれており、まさに世界が久保の動向に注目していると言える。

 そうした中で、日本サッカー界からは慎重な意見も出ている。Jクラブの強化担当は「せっかく試合に使ってもらっているのに海外に行っても出場できる保証はないし、今はその(海外移籍)タイミングじゃないでしょう。今は成長中だから、まずはシーズンに集中し、誰もが納得するような状況になってから移籍しても遅くない」と指摘した。

 また、元日本代表MF前園真聖氏(45)は早期の海外移籍には賛成するものの「久保の場合は今なのか…タイミングは難しいところ。できれば今季はシーズンを通して、しっかりと実績を残して海外移籍するというのがベストではないでしょうか。プロの舞台で1年間、いいパフォーマンスを見せ、その調整法などを実体験するのも今後のためには重要なことです」と話した。

 さらなるポイントはFC東京のチーム動向だという。前園氏は「現在、FC東京はJ1で優勝争いをしているところです。そのリーグ初制覇にしっかりと貢献し、そこから欧州に出て行ったほうが、久保のためになるかもしれません。シーズン途中で抜けるのは…。相手クラブの問題もあるでしょうが、来年1月、または来年の夏を待つのも一つの選択肢になるでしょう」。

 もともと、久保がFC東京とプロ契約を結ぶ際、海外進出が可能となる18歳になれば移籍を容認することが条件とされていたという。

 このため久保はすでに今夏の海外移籍を見据えるが、FC東京はクラブ事情からも今季の残留を求めている。果たしてモテモテの久保はどんな決断を下すのか。