6・7開幕の仏女子W杯なでしこメンバー発表 高倉監督「一芸」と「阪口」女の賭け

2019年05月11日 16時30分

W杯メンバーに選出された(後列左から)植木、小林、山下、遠藤、宮川、阪口、(前列左から)三浦、長谷川、清水、籾木

 なでしこジャパンの奇襲は吉と出るのか。日本サッカー協会は10日、フランス女子W杯(6月7日開幕)に臨むメンバー23人を発表。高倉麻子監督(50)は2大会ぶりの世界一奪還に向けて、前回大会からの大幅な若返りを実行。コンディションが上がらず今季公式戦出場ゼロのMF阪口夢穂(31=日テレ)をあえて招集する大胆な手を打った。常に冷静な指揮官が手を染めた“ギャンブル選考”の背景に迫った。

 なでしこジャパンは東日本大震災直後の2011年ドイツ女子W杯で初優勝を果たすと、12年ロンドン五輪で銀メダルを獲得し、15年カナダ女子W杯は準優勝。16年リオデジャネイロ五輪出場を逃したものの、今回は2大会ぶりの頂点を期待されている。高倉監督は「優勝は目指さない限り手に入れることはできないので、優勝を目指したい」と力を込めた。

 とはいえ、近年はライバル国も女子の強化に力を入れており全体的にレベルアップ。日本のパスサッカーも研究されており、王座奪回はこれまで以上に困難なミッションになる。指揮官も「普通にやっていては勝てないということを理解し、ある時は壊してつくり上げることをしながら戦いたい」と正攻法の戦いとは別の戦略を練っている。

 そんな状況で重視した選考ポイントの一つは、すべての面で平均以上の選手よりも「何か一つでも強いものを持った選手」(高倉監督)だ。今回のメンバーには昨年のU―20女子W杯優勝メンバーでスピードが武器のFW遠藤純(18)、一瞬で相手を振り切る瞬発力と高い決定力を誇るFW小林里歌子(21=ともに日テレ)ら“一芸”に秀でた若手を抜てき。安定を捨ててでも、急成長して救世主になるかもしれない選手を揃えた。

 そのあおりを食ったのがFW田中美南(25=日テレ)とMF猶本光(25=フライブルク)の実力派2人。田中はなでしこリーグ3年連続得点王で、昨季はリーグMVPだが、高倉監督の琴線に触れるプレーは少なかった。猶本は実力を磨くためにドイツに移籍し、最近は試合にも出場できるようになったが、突出した武器がなく、選外という結果となった。

 もう一つは、指揮官が「不測の事態の時にチームを支えてほしい」というベテランの選出。心身ともに好不調の波がある若手ばかりでは、約1か月の長丁場を戦い抜けない。そこで優勝した11年大会で大黒柱だったMF澤穂希のような存在を求めて選出したのが阪口だ。昨年4月に右ヒザを負傷し長期離脱。今年元日の皇后杯決勝で実戦に復帰したものの、開幕前に同じ箇所に違和感を覚えて今季の公式戦出場はない。

 それでも指揮官は「(W杯の)初戦もターゲットにするが、どこまで上がってくるかを見ないといけない」と“見切り発車”をにおわせた。

 大会期間中に間に合ってくれれば、という考え方で体調が戻らずにW杯登録選手枠の1つを無駄にしてしまう可能性もある。だが、高倉監督は「医療スタッフとも話している。コンディションは大丈夫」と復帰に自信を示し「経験豊富な選手だし、チームに落ち着きをもたらすという意味でも期待している」と信頼は厚い。阪口も「試合に出ていない中なので思うところもあるが、選ばれた以上は全力で戦いたい」と覚悟を決めた。

 大きなリスクをはらんだメンバー選考。周囲が普通だということも「私の普通ではない」というのが高倉監督の信念。“のるかそるか”の大勝負で2020年東京五輪につながる結果を出せるか。