J1湘南の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50)による選手やスタッフらへのパワハラ疑惑の波紋が拡大している。

 15日、期限付き移籍していたMF武富孝介(28)が契約期間を満了することなく、所属元のJ1浦和に復帰することが発表された。武富は今季、リーグ戦でここまで18試合に出場してチーム最多となる5ゴールをマーク。そんな攻撃陣の大黒柱が、本来の契約期間である2020年1月末を待たずして、シーズンが佳境を迎える時期にチームを去ることになった。

 異例の移籍劇となったが、本人がクラブを通じて出したコメントは意味深な内容だ。

「ここ数日のベルマーレの変化によって曹監督がしばらく指揮を執ることができなくなりました。(中略)一時的な措置とはいえ、この先がどうなるか分からない状況のまま、100%サッカーに集中できるのか、チームのために力を出し切れるか、不安を覚えている」

 さらに武富は「僕自身は曹監督の指導には愛情があったと思っています」と渦中の指揮官を擁護するような言葉を添えた。

 パワハラの被害をJリーグに訴えた選手やスタッフがいる一方で、曹監督を慕っている選手もいる。曹監督がJリーグの調査終了まで謹慎することになり今後の去就も不透明な中、今回のパワハラ疑惑が引き金となって“離脱者”が出てしまったのだ。指揮官の去就次第では今後も武富に続く者が出る可能性もあり、最悪の場合、チームは一枚岩を維持できずに分裂の道をたどってしまうかもしれない。