前代未聞の復讐劇が始まるのか。サッカー日本代表前監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が27日、都内の日本記者クラブで自身の解任に対する反論会見を開いた。日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)や、技術委員長を務めた西野朗監督(63)らを名指しして猛批判を展開。協会側との対立の根深さを鮮明にした。協会と遺恨を引きずるなかで浮上してきた驚きのプランとは――。

 落ち着いた様子で会見を始めた前指揮官は「私はしっかりと日本で仕事をしてきた。こんな形で日本を去ることになるとは…。考えつく限りの最悪の悪夢の中でも、このようなことを考えたことはない」とまずは解任への不満を爆発させた。

 すると、ここからは協会への“口撃”がヒートアップ。「何か問題があったとしたら会長が事前に言ってほしかった。会長はあるスタッフとは話したけど、なぜ私たち(外国人)のコーチングスタッフとは話をしなかったのか」と協会トップの田嶋会長にかみついた。返す刀で「西野さんは技術委員長は初めてだった。彼とのコミュニケーションは少なかったかもしれない。あまり多くを語る人ではなかった」と西野監督の技術委員長としての仕事ぶりにも疑問を投げかけた。

 さらには「会長は技術委員会がたくさんの修復を試みたと言ったが、技術委員会の存在すら知らなかった。誰からも話を聞いたことはない」と技術委員会の体制にも矛先を向けた。そして最後には本紙既報通り、一部選手の造反の可能性にも言及した。

 日本の協会、そして代表チームに真っ向から牙をむいたハリルホジッチ氏。今後も根深い遺恨が残ることは必至だが、まさかの方法で日本に“復讐”する可能性も出てきた。「韓国協会がロシアW杯後の代表監督として招聘する動きがある。韓国内には日本からの“引き抜き”にアレルギーがある一方で、さまざまな面でメリットのほうが大きいとの見方もある。実現もあり得るのではないか」と、韓国にもパイプを持つJクラブ強化担当者は指摘する。

 韓国は昨年6月にウリ・シュティーリケ前監督(63)を解任して申台龍監督(49)が指揮を執っているが、評価は高くなく、国内よりも海外から実績ある指揮官を待望する声が強い。そこでハリルホジッチ氏が次期監督候補の一人としてリストアップされているのだ。

 韓国にとっては、アジアで最大のライバルである日本を熟知したハリルホジッチ氏が持つ情報量は魅力。現代表だけではなく育成年代、さらに指導者にも精通しており、2022年カタールW杯を目指すうえで格好の日本対策となる。

 また、志向する戦術も日本より韓国向き。フィジカルの強い選手が多く、FW孫興民(25=トットナム)など欧州で活躍する決定力があるストライカーを擁する選手編成は、ハリルホジッチ氏が標ぼうする堅守速攻にピタリとハマる。

 昨年12月に東アジアE―1選手権で韓国と対戦した際にハリルホジッチ氏は「パワーとテクニックで試合をコントロールする姿は驚くべきものだった」と韓国選手の実力を絶賛。自身の戦術がマッチする土壌が整っていることに加え、W杯アジア予選も経験済み。何より、宿敵の指揮官として日本にリベンジできる絶好の機会をつくれるとなれば、就任へ乗り気になる可能性も十分考えられる。

 この日の会見で「韓国戦の重要度を分かっている」と語るなど両国伝統のライバル関係もよく理解していることを示した。日本を追われた前指揮官は宿敵を率いて日本の前に立ちはだかるかもしれない。