サッカー日本代表の前監督バヒド・ハリルホジッチ氏(65)が“暴走準備”を着々と進めている。21日に来日した前指揮官は電撃解任に対する反論会見を27日に都内で開く予定で、異例のタイミングで更迭を決断した日本サッカー協会と全面戦争も辞さない構え。会見では協会トップの田嶋幸三会長(60)だけではなく、FW本田圭佑(31=パチューカ)にも“個人攻撃”を仕掛けるという不穏な情報も流れている。

 21日に来日したハリルホジッチ氏は「本当に私をうんざりさせるような状況に追いやって、私をゴミ箱に捨てたような状態だ」と怒りで声を震わせながら訴えた。そして「私の誇りを傷つけるようなところは戦わないといけない。私はまだ終わっていない」と自らを更迭した協会に対し、高らかに宣戦布告した。

 一度やると決めたらとことんディテールにこだわる性格。その言葉通り、27日に設定した記者会見に向けて水面下で入念に準備を進めているという。ハリルホジッチ氏と親交のあるJクラブ関係者は「代表メンバー発表のときによくやっていたプレゼンみたいに、今は自分が主張したいポイントを整理しているとは聞いている。今度の会見では具体的な個人名も出すつもりのようだ」と指摘する。

 現時点で前指揮官は協会への対決姿勢こそ鮮明にしているものの、個人名については言及していない。しかし反論会見では「協会VSハリル」の構図を飛び越えて、自らの正当性を主張するために“個人攻撃”に及ぶ可能性が高い。真っ先にターゲットとなるのは協会トップの田嶋会長だ。W杯まで約2か月に迫る中、ハリルホジッチ氏の解任を決断し、フランスまで飛び、直接「契約解除」を言い渡した張本人。この通告の場でも激しい言葉のぶつかり合いがあっただけに、矛先が向かうのは当然だろう。

 技術委員長の立場から前指揮官を支えていた西野朗新監督(63)にも牙をむきかねない。ロシアW杯に向けてチーム強化を相談するなど、常にハリルホジッチ氏の腹心として働きながらも、自らの更迭後に「後任監督の座に収まった」と逆恨みしてもおかしくない。日本代表監督への未練も相まって、現指揮官を“口撃”するのでは?とみられている。

 また、田嶋会長が解任会見で「選手との信頼関係が薄れたこと」などを強調したため、代表イレブンがヤリ玉に挙げられることも考えられる。中でもハリルホジッチ氏が取り組んでいた堅守速攻スタイルにW杯アジア最終予選中から猛反発するなど、“反ハリル派”の筆頭だったのはFW本田だ。お互いに名指しで批判し合うなど“犬猿の仲”だけに、ハリルホジッチ氏が会見で本田の名前を挙げて批判しても、誰も驚かないだろう。

 試合でも相手の弱点を突くのが得意なハリルホジッチ氏が選手を標的にするのは、むしろ必然かもしれない。果たして前指揮官はどこまで暴走するのか。日本サッカー界が戦々恐々とする日はまだ続きそうだ。

★カウンター一辺倒の戦術に猛反発=ハリルホジッチ体制に最も不満をくすぶらせていたのはチームリーダーの本田だ。特にカウンター一辺倒の戦い方を加速させる指揮官に猛反発。2016年10月のW杯最終予選イラク戦後には「もっと相手がうざいと思うくらいパスを回したいけど、それは戦術的に求められていない」と代表チームが機能しない状況を嘆いていた。一方、ハリルホジッチ氏はロシアW杯出場権を獲得した昨年秋以降、コンディションの上がらない本田を代表メンバーから外していた。今年に入って状態を取り戻した本田の代表復帰について聞かれると「みなさん(報道陣)がお気に入りの選手かもしれないけど、名字と名前で選手を選ぶわけではない」と、湧き起こる待望論に苦言を呈するなど、深刻な対立が浮き彫りとなっていた。