【ヨルダン・アンマン17日(日本時間18日)発】サッカー女子アジアカップ準決勝で1次リーグB組2位の日本(なでしこジャパン)はA組1位の中国に3―1で快勝し、優勝した前回大会に続く2大会連続の決勝進出を決めた。前半にエースFW岩渕真奈(25=INAC神戸)が先制ゴール。後半には途中出場のFW横山久美(24=フランクフルト)が2得点を挙げて突き放した。20日(同21日未明)の決勝では連覇を懸けて再びオーストラリアと激突する。

 頼りになる新エースの一撃でなでしこが息を吹き返した。高倉麻子監督(49)は1次リーグ最終戦のオーストラリア戦から先発を5人入れ替え、背番号10のMF阪口夢穂(30=日テレ)も今大会初めて外す大胆布陣。それでも戦力ダウンは感じさせず、前線の連係はスムーズ。その中で岩渕のスーパーゴールが生まれた。

 前半39分、MF隅田凜(22=日テレ)の縦パスをペナルティーエリア右で受けると絶妙のトラップから前を向き、DFを交わして中央にカットイン。迷わず左足を振り抜くと、強烈なシュートはGKの手をはじいてゴールネットを揺らした。

 度重なるヒザの故障でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)から日本復帰を果たしたのが昨年6月。欧州の大柄な選手に対抗するために増やしていた体重を落とすことで、故障のリスクを回避した。その一方で、本紙には「一緒にパワーも落ちちゃうんじゃないかと心配もあるんです」と吐露。自分のシュートに力強さがあれば、もっとシュートが入っていたかもしれないという思いが強かっただけに、不安は尽きなかった。

 だが、この日のゴールはそんな迷いも吹き飛ばす、男子顔負けの一撃。先制して大はしゃぎするようなことはなかったものの「私がなでしこを引っ張る」という自覚にあふれていた。

 岩渕の活躍を見て、負けていられないのが横山。後半は中国に支配される時間が長く、なでしこはピンチの連続。高倉監督は23分のFW川澄奈穂美(32=レイン)に続き、28分に横山を投入するとリズムが変わった。そして後半40分、左サイドで受けた横山は強烈なミドル弾。右足アウトにかかって不規則な回転になったボールはゴール右上に突き刺さった。

 さらに2分後には川澄のポストプレーから右足シュート。これが相手のハンドを誘ってPKを獲得すると、横山が自ら蹴り込んで3点目。終了間際にPKを決められたものの、1勝2分けだった1次リーグの重苦しい雰囲気を打ち破る快勝に選手たちの笑顔がはじけた。

 高倉監督は「アグレッシブに戦いたいと思っていた。ウチはどの選手が出てもチーム力が落ちない。本当にみんながよく戦ってくれた」と選手をたたえた。決勝は1次リーグで引き分けたオーストラリアとの再戦だが、DF鮫島彩(30=INAC神戸)ら主力を温存できたのは大きい。「相手のチーム力は高いが、私たちも一戦一戦成長している。思い切ってぶつかってしっかり決着をつけたい」と頂点を見据えた。

 岩渕の話=ゴールは凜ちゃんからいい形で縦パスが入ったので、決めることができてよかった。みんなが頑張ってくれているので、自分はゴールという結果を残そうと思って毎試合やっている。オーストラリアとは前回引き分けているので、しっかり勝ちにいきたい。

 横山の話=1点とって試合を楽にしたいという思いでピッチに入った。ファーストシュートが決まってよかった。(ゴールまでは距離があったが)自分の中では射程圏内だし、得意なコースなので蹴った瞬間に入ったと思った。3点目も、PKを蹴らせてくれる仲間に感謝したい。前回優勝しているので、必ずまた優勝したい。