日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)は9日、日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(65)の解任を決めたことを明らかにした。ふがいない戦いを続ける現体制のままでロシアW杯本番に臨むのは難しいと判断。9日午後に緊急会見を開き、後任監督を発表するという。これまでチーム戦術などを巡ってハリルホジッチ監督と対立してきたFW本田圭佑(31=パチューカ)の“主張”が改めてクローズアップされそうだ。

 ロシアW杯の出場権を獲得した昨秋以降、日本代表はふがいない戦いを続け、先月の欧州遠征では格下のマリと1―1のドロー、ウクライナに1―2で敗れるなど、本番を目前にしてもチーム状態は上向かなかった。イレブンもハリルホジッチ監督が求める堅守速攻スタイルに適応できずにバラバラなままだった。

 協会の西野朗技術委員長(63)はウクライナ戦後に「現状はこの体制で行こうと思っている」との見解を示し、チーム解散前には「現在の体制でW杯も戦う」と選手に通告していた。だが、帰国後に各方面から批判が噴出したことや、本番に向け選手たちが指揮官への信頼を失ったことを含め、急きょ方針を転換しての電撃解任となった。田嶋会長が渡欧し7日に本人に通達したという。

 今回の更迭劇は、ハリルホジッチ監督が日本選手の特長を生かさずにカウンター戦術に固執したことがキッカケと言えるが、かねて指揮官の方針や戦術に異を唱えていたのは本田だった。W杯アジア予選中からハリルスタイルが日本人選手にマッチしないと指摘。2016年10月のイラク戦後に「もっと相手がうざいと思うくらいパスを回したいけど、それは戦術的に求められていない」と速攻一辺倒の戦い方に不満を語っていた。

 さらに先月のウクライナ戦後、本田はチームが低調なパフォーマンスだったことについて「個以外のものが、個を引き立てるというのもありますよ。それができてないというのはあるでしょうね」とコメント。低調な試合が続くのは、各選手の特長を引き出すような組織的な戦いができていないとし、ハリルホジッチ監督の方針に異論を展開していた。

 本田自身がハリル戦術を苦手とするプレースタイルであることも批判を展開する理由だったのかもしれない。とはいえ、結果として本田が指摘してきた通り、3年間積み重ねたはずのハリル流はW杯を目前にしてもまったく機能せずに指揮官は解任。本田の“主張”が改めて見直されることになりそうだ。

 日本代表は新体制でロシアW杯に臨むが、後任監督は選手とのコミュニケーションに難のない日本人指導者が確実。リオデジャネイロ五輪を指揮した手倉森誠コーチ(50)の昇格が有力なほか、アトランタ五輪で監督を務めた西野委員長、東京五輪に出場するU―21代表の森保一監督(49)が候補となる。

 ただ本番に向けて新指揮官がチーム作りに取り組めるのは、5月中旬にチームが集合してから約1か月しかない。戦い方やメンバー選考を含め白紙からの再スタートとなるだけにリスクがあるのも事実。ベスト8が目標の日本代表は、今回の解任が吉と出るのだろうか。