スパイ問題でイングランド代表「ロシアW杯ボイコット」騒動

2018年03月08日 11時00分

1次リーグG組でベルギー、パナマ、チュニジアと対戦するイングランド(ロイター)

 6月14日の開幕まで100日を切ったサッカーW杯ロシア大会が、またも激震に見舞われた。ロシアの元情報機関員とその娘が英国で意識不明の重体で見つかった件で、英国のボリス・ジョンソン外相(53)が、ロシア側の関与が明確になればイングランド代表がW杯をボイコットする可能性を示唆して騒動を呼んだ。2人に対しては、何者かが暗殺を謀って有害物資を摂取させた可能性も指摘されている。ロシア側は関与を否定。国ぐるみとされるドーピング問題で組織委員会の会長が辞任したロシア大会が、今度は政治に巻き込まれるのか。

 英南部ソールズベリーで、ロシアの元情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏(66)が体調を崩し、意識不明の重体で見つかったのは4日のこと。場所はショッピングセンターのベンチで、娘のユリアさん(33)も同じ状態で一緒にいた。

 スクリパリ氏は、ロシア情報機関の軍参謀本部情報総局(GRU)の大佐だったが、2006年に英国側に機密情報を提供したとして有罪判決を受け、10年に米国とロシアのスパイ交換で国外退去となっている。

 英国ではプーチン政権を批判して亡命したロシア情報機関の元中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏が06年に殺害され、体内から致死性の放射性物質ポロニウムが検出された。ロシアの関与が疑われ英ロ関係が悪化した経緯がある。

 英メディアの報道によると、今回の件に関してジョンソン外相は「もしみなさんが想像している通り(ロシアが関与している)なら、我々はロシアとの付き合い方を深刻さを持って話し合わなければいけない」と議員らの前で語った。

 さらに「私としては、この夏のW杯のことを考えるのは難しい。英国の代表がこの大会に普通に参加することを想像し難い」との趣旨の発言も行い、英大衆紙などが電子版で一斉に「ボイコット示唆」「W杯でロシアに警告」と報じた。

 ロシア大会には英国から、イングランド代表が6大会連続15回目の出場を決めている。サッカー発祥の地である英国の歴史と伝統あるチームが政治的な問題でボイコットなどすれば、国際サッカー連盟(FIFA)から制裁を受けかねない。選手にとっても自分の価値を高める場であるだけに、チームからの猛反発も必至。ジョンソン氏の発言に、ネット上では「彼はバカ者だ。なぜサッカーを(今回の事件に)持ち込むのか」と批判の声も上がった。

 ロンドン五輪時に同市長を務めたジョンソン氏は、破天荒的なキャラクターの持ち主でもある。過去にも失言騒ぎを起こしており、今回も外務省側が発言の“修正”を図った。「ハフィントンポスト」などの報道によると、外相が示唆したのはチームのボイコットではなく、関係者や要人、高官らが大会中にロシアを訪れないという意味だという。

 とはいえ、ジョンソン氏は、ロシアの関与が明らかになれば「適切かつ確実に対応する」とも述べており、コトがW杯に何らかの形で及ぶ可能性が完全に消えたかどうかは分からない。英当局はスクリパリ氏父娘の件について捜査を始めているだけに、英ロ関係をめぐって事態は予断を許さない状況だ。

 在英ロシア大使館は6日、「ロシア情報機関の計画的行為であるかのように報じられているが、事実ではない」と関与を否定した。

 昨年末には、ロシアの国家ぐるみドーピング問題で、国際オリンピック委員会(IOC)から五輪永久追放処分を受けたビタリー・ムトコ副首相がW杯組織委員会の会長を辞任したロシア大会。開幕へのカウントダウンも始まったこの時期に、またも激震に見舞われた。