鉄人DFの移籍は吉と出るか。イタリア1部インテルは欧州移籍市場の締め切り日となる31日(日本時間1日)に所属するDF長友佑都(31)がトルコ1部ガラタサライに6月30日まで期限付き移籍すると発表した。レンタル料は100万ユーロ(約1億3500万円)で買い取り義務のない移籍になるという。6月のロシアW杯を見据えての決断だが、新天地には不安も多い。世界の大物選手たちも苦労したトルコの“特殊事情”とは――。

 ガラタサライはリーグ優勝19回を誇り、人気も国内で随一の超名門。ファティ・テリム監督(64)から実力を高く評価された長友は、今まで以上の出場機会を得られそうだ。しかし、活躍するのは決して簡単ではない。新天地は一筋縄ではいかない問題が多いからだ。

 Jクラブ幹部はこう指摘する。「トルコは治安の問題がどうしてもつきまとうし、ガラタサライに関しても以前からチーム内の複雑な事情がちらほら表に出てきたりしているでしょ。環境に適応して実力をちゃんと発揮できるかが鍵になる」

 トルコでは近年、過激派組織「イスラム国」や反政府組織「クルド労働党」によるテロや武力衝突が頻発。現在は大規模な掃討作戦で窮地に追い詰められているイスラム国だが、テロの危険性は消えておらず、外務省からはガラタサライの本拠地イスタンブールにレベル1の危険情報が発出されている。ガラタサライには昨年J1神戸に入団した元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(32)も所属していたが、本人や家族が現地の治安悪化に耐えかねて退団に至った経緯がある。

 チーム内にも難しい問題がある。以前からトルコ人選手の一部に差別意識が根強くあることが指摘され、地元紙「アムクスポル」ではポドルスキが退団する際に、ガラタサライの内情について「複数のトルコ人選手がポドルスキにパスを出さず、(FWディディエ)ドログバ(39)にも同じことが起きていた」と報道。鳴り物入りで入団した外国人選手が仲間外れにされる風潮があるのだ。

 同じ本拠地のフェネルバフチェ、ベシクタシュとの“イスタンブール・ダービー”は世界でも最も過激な試合の一つとされ、サポーターによる暴動が頻発。過去には死者も出ており、ピッチ上の選手に危害が加えられるケースもあった。

 移籍したとしても活躍できる保証はない。新たな挑戦を始めた長友にはどんな未来が待っているのか。