6月のロシアW杯でハリルジャパンの命運を握るのは“ガラスの主将”の動向だ。日本代表の大きな懸案がMF長谷部誠(33=Eフランクフルト)の右ヒザの問題で、患部は完治の見通しが立っていない。バヒド・ハリルホジッチ監督(65)は万全でなければW杯メンバーから外す方針を固めたが、主将として唯一無二の存在とあって“代替案”の模索が急務となっている。

 長谷部は昨年3月に手術を受けた右ヒザの状態が思わしくなく、復帰と再発を繰り返している。W杯切符がかかった昨年8月31日の最終予選オーストラリア戦に出場したものの、リハビリを急ピッチで進めた無理がたたり患部は腫れ上がった。その後はクラブで出場しても、またすぐに欠場の繰り返し。12月のリーグ戦は3試合連続で欠場した。

 ドイツ1部リーグの冬季中断期間で帰国し、故郷の静岡・藤枝市でサッカー教室を開催した際には、右ヒザについて「完璧ではない。(痛みと)付き合っていかなければいけないけど、楽観的にいる。6月には完治すると思う」と説明。本番ギリギリまで予断を許さない状況だ。

 日本代表にとって長谷部はキープレーヤーで、主将として絶対的な存在となっている。ハリルホジッチ監督も「選手としても人間としてもチームにとって重要。他の選手に対する大きな影響力を彼は持っている」と全幅の信頼を寄せている。

 それでも指揮官は現実的だ。故障を抱えていても精神的支柱の役割を担う“メンタルプレーヤー”としてW杯に同行させることも可能だが「ツーリストとして連れて行く選手はいない。プレーできないことが分かっている上で連れて行くことはしない」。さらに「もちろん、長谷部がいなかったら、プレーできなかったらということは考えている」と本大会で長谷部不在のケースも想定し始めている。

 とはいえ、簡単に長谷部を切れないのが今の日本代表の大きな悩み。人材難で主将の代役候補が見当たらないのだ。

 DF吉田麻也(29=サウサンプトン)や、ベテランのGK川島永嗣(34=メス)、DF長友佑都(31=インテル)などが代行経験を持つが、代表の主将には特有の資質が必要でハリルホジッチ監督が合格点を出すには至っていない。協会関係者も「ハセのような働きができる選手はなかなかいない」と嘆く。

 長谷部が不在だった昨年10月シリーズでは、格下のニュージーランドとハイチを相手にホームで大苦戦。そのため指揮官は国内組だけで臨んだ12月の東アジアE―1選手権で新たな候補も模索したが「MF今野(泰幸=34、G大阪)にやってもらおうと思ったが、プレッシャーに感じるみたいだ。選手がやりたくないと言うなら強制もできない」と解決策は見つからないままだ。

 右ヒザの状態にかかわらず長谷部を“当確”させる手もあるが、ハリルホジッチ監督はあえてその選択肢を排除。自らの首を絞めることにならなければいいが…。