Jリーグ初代チャンピオンとなったヴェルディ川崎(現J2東京V)の監督としても知られるサッカー元日本代表DF松木安太郎氏(60)が本紙のインタビューに応じ、来年6月のロシアW杯に臨むハリルジャパンについて熱血トークを展開した。コロンビア、セネガル、ポーランドと激突する1次リーグの展望に加えて、日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(65)の“ビッグ3外し”にも意外な見解を披露した。

 ――日本はW杯1次リーグH組に入った

 松木氏:どの組でも厳しいとは思っていたが、優勝経験国がいないのは日本にとってプラスではある。そしてもう一つ、1戦目にコロンビアと当たることだ。前回(ブラジルW杯)は3戦目で向こうも上り調子で対戦した。今回は初戦。後々のことを考えると向こうもトップコンディションで来ないのでは。日本が初戦でトップコンディションに合わせられれば金星があるかもしれない。

 ――強豪は初戦にピークを合わせない傾向だ

 松木:南アフリカW杯で優勝したスペインも初戦はスイスに負けた。そこに隙が生まれる可能性がある。この組で近年のW杯で一番実績があるコロンビアが初戦で良かったのでは。1、2戦目で良い流れをつくって1勝1分けなら、日本にもチャンスが来る。

 ――ハリルホジッチ監督の指導力をどう思うか

 松木:彼が日本代表監督になったのは、前回大会のアルジェリア代表監督としての評価があるからだ。1次リーグで最も弱いとされながらも突破して、そこでの戦い方が堅守速攻だった。僕は、日本が上位に行く可能性を秘めているのはそのやり方しかないとずっと言っていたし、最近はそういう形に近づいてきたと感じる。

 ――代表から外れているFW本田圭佑(31=パチューカ)、MF香川真司(28=ドルトムント)、FW岡崎慎司(31=レスター)は必要か

 松木:彼らこそ今の戦術で、少ない人数で点を取れる人選。一人で決着をつけられるとなったら彼らの名前が入ってくるでしょう。本田の1トップや、そこが岡崎に代わったりそういう形が考えられる。それに代表には個性のある選手がいないとダメなんだよ。

 ――では、なぜ揃って外しているのか

 松木:短期間のW杯では活躍することへの“飢え”が重要になる。W杯に行けただけで満足してはいけないからね。欧州の舞台で活躍する選手が、W杯という大舞台で日の丸をつける選手としてどれだけ飢えているのか。それが“仕事”ができる一番の決め手になると言っても過言ではない。ハリルホジッチ監督はあえて彼らを外すことで、そういった“欲する思い”を求めているのかもしれない。

 ――“サプライズ”選出も注目される

 松木:(東アジアE―1選手権で)DF植田(直通=23、鹿島)の使い方はおもしろかったよね。FW小林(悠=30、川崎)も(代表で)使われたり、外されたりしながら(J1)得点王になり、FW川又(堅碁=28、磐田)も「自分が入りたい」との思いが強くなった。この前も(磐田の)名波(浩)監督(45)に話を聞いたら今季は「メンタル面で相当言った」と話していた。その辺りの強さが変わってきている。南アフリカW杯の本田がまさに“飢え”を見せたけど、そういう選手をどうつくるか。

 ――日本の躍進は

 松木:期待したいよね。予選を突破して16強、そして8強を目指していってほしい。

 ――一方、東京五輪の指揮官には森保一氏(49)が就任した

 松木:彼はすごく人格者だし、選手、監督としても実績をつくっているから期待したい。あとは彼をバックアップしてあげる体制を取ることだ。そして彼は(選手を)A代表につなげる役割も理解している。彼自身にもゆくゆくはA代表監督になってもらいたい。

 ――来年1月には本紙で半生を振り返る新連載が始まる。タイトルの「己の実力を嘆くより、己の努力を悲しめ」に込めた思いは

 松木:自分は体も小さかったし、常に一生懸命やって努力を怠らず、前向きにやってきた。そんな思いを表現しました。ぜひご期待ください。

【今後の日程】ロシアW杯に臨む日本代表の次戦は、来年3月に欧州に遠征して戦う国際親善試合。ハリルホジッチ監督は1月を休暇に充てた後、2月に代表スタッフとともに欧州組の視察を行う。「何人かには会いたい」と直接面談も実施しながらW杯メンバーを絞り込んでいく方針だ。

 指揮官は「30人程度に絞られる」と語っており、引き続き国内外でプレーする日本選手を視察し、5月中旬にロシアW杯に臨む日本代表メンバー23人が決まる。本番に向けては5月30日の壮行試合(日産)後に欧州で合宿を行い、W杯のベースキャンプ地となるロシア・カザン入り。6月19日に1次リーグ初戦のコロンビア戦を迎える。

【プロフィル】まつき・やすたろう 1957年11月28日生まれ。東京都出身。小4で読売クラブに入団し、16歳でトップチームに昇格。83年の日本リーグ初優勝をはじめ数々のタイトルを獲得した。日本代表でも活躍し、メキシコW杯予選にも出場。90年に現役を引退し、93年からV川崎(現J2東京V)の監督に就任した。Jリーグ2連覇を達成。その後はC大阪、東京Vの指揮官を歴任。現在はサッカー解説者として活躍中。167センチ、68キロ。