なでしこは希望の花を咲かすことができなかった。15日に千葉・フクダ電子アリーナで行われた東アジアE―1選手権女子の最終戦で、なでしこジャパンは北朝鮮に0―2と完敗を喫して2位に終わった。3大会ぶりの優勝を逃し、見えてきたのは世界レベルとの圧倒的な差。温かかったファンの視線も厳しくなるばかりで、金メダル獲得が至上命令となっている2020年東京五輪に向けて不安は募るばかりだ。

 今後の飛躍を予感させる大会にするというなでしこジャパンのもくろみは、もろくも崩れた。世界屈指の実力を誇る北朝鮮に2失点完敗。想像以上に厳しい現実を突きつけられた。高倉麻子監督(49)は「個の力、コンビネーション、技術、精度が足りなかった」。昨年4月の発足から進めてきた強化方針が何一つ形になっていないことを露呈した。

 試合を見守った日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)は「(北朝鮮は)世界のトップ4、5に入る国。明らかに向こうが上だった。今は苦しい時だが、ここで世界のトップのサッカーに食らいついていかないといけない」と険しい表情で語った。

 次の公式戦は来年4月の2019年フランス女子W杯アジア予選を兼ねた女子アジアカップ(ヨルダン)。8か国で5枠を争うW杯切符獲得は問題なさそうだが、W杯で優勝カップを奪回するのは簡単ではない。日本中の注目が集まる東京五輪での金メダル獲得も、現状では夢物語だ。

 こんな状況にサポーターも声を上げた。試合後、観客席に向かった選手たちは罵声を浴び、指揮官は「サポーターの方から厳しい言葉もいただいた」と静かに受け止めた。後半途中でピッチを退いて無得点に終わったFW岩渕真奈(24=INAC神戸)は「代表は結果で応えないといけない立場だけど、選手みんな戦っていた。サポーターの方にガヤガヤ言われるのはムカついてしまう」と悔しさを押し殺して語った。

 11年ドイツ女子W杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダルといった輝かしい実績は過去のもの。当時、チームの主力だったMF川澄奈穂美(32=レイン)は「応援してくれるのはうれしいが、ダメな試合をしたら批判してほしい」とあえて耳の痛い意見を求めていた。それがなでしこの強さの礎だった。

 だが今のチームにはそうした声を受け入れ、反発する力もない。昨年のリオ五輪出場を逃し、日本女子サッカー界は暗黒時代に逆戻りしかねない状況。窮地の高倉監督は限られた時間で“時計の針”を戻すことができるか。