ハリルジャパンのサバイバルが意外な展開を迎えた。日本代表は9日に行われた東アジアE―1選手権(味スタ)の開幕戦で北朝鮮に1―0と勝利したが、格下相手にピンチの連続という情けない内容だった。それでもバヒド・ハリルホジッチ監督(65)は納得顔。来年6月のロシアW杯に向けて見えてきた2つの“現実”とは――。

 日本は代表経験が浅い選手が多いからか、立ち上がりから連係ミスが目立ち、大ピンチの連続。後半アディショナルタイムにMF井手口陽介(21=G大阪)のゴールで辛くも勝利を収めたが、決して褒められる試合内容ではなかった。

 そんな中で輝きを放ったのが、後半途中から出場したFW伊東純也(24=柏)だ。右サイドで自慢のスピードを生かして何度もドリブル突破。クロスやCK獲得など好機を演出した。ハリルホジッチ監督は「初めての招集だが、彼の仕掛ける、抜き去る能力は違いをつくれると証明した。うちには1対1で勝負できる選手が少ないから評価したい」と大絶賛。A代表デビュー戦ながら一気にレギュラー候補にまで浮上した。

 伊東の台頭で窮地に陥るのが、代表で同じポジションを争うFW本田圭佑(31=パチューカ)だ。9日に行われたクラブW杯準々決勝のウィダド・カサブランカ(モロッコ)戦で延長も含めフル出場したものの、目立った活躍はできなかった。ハリルホジッチ監督は前線の選手に運動量や個人での突破力を求めており、FW久保裕也(23=ヘント)やFW浅野拓磨(23=シュツットガルト)もいる右FWの争いで崖っ縁に立たされた形だ。

 その一方で指揮官は「最後の30メートルで良いパスを出せる清武タイプの選手がいなかった」とわざわざ名前を挙げてMF清武弘嗣(28=C大阪)の不在を嘆いた。

 清武は6日の練習中に頭部を強打。脳振とうと診断され、今回の合宿途中に離脱した。国内組の最終テストの舞台に上がれなかったが、試合を終えたMF今野泰幸(34=G大阪)が「消極的なパスも多かったかもしれない」と語ったように、イレブンの間でもパスの部分に難があるとの認識が強い。その弱点を埋めるために今後、清武の存在がクローズアップされることは確実だ。

 首の皮一枚つながった形の清武には、来年3月の国際親善試合で“追試”のチャンスが浮上。代表復帰の可能性がまた遠のいた本田とは対照的な扱いだ。E―1選手権の残り2試合は現在招集されているメンバーだけでなく、2人の大物の運命を決定づける試合にもなりそうだ。