日本サッカー協会は29日、東アジアE―1選手権(12月9日開幕、味スタ)に臨む日本代表メンバー23人を発表した。国際ルールで海外クラブ所属の選手を招集できない中、来年6月のロシアW杯本番に向け、故障でハリルジャパンから遠ざかっていたMF清武弘嗣(28=C大阪)が3月のW杯アジア最終予選以来、約8か月ぶりとなる復帰を果たした。まだパフォーマンスは完全復活に至っていない状態での代表復帰には、ある狙いが隠されていた。

 記者会見したバヒド・ハリルホジッチ監督(65)は「Jリーグの選手にとっては(海外組を含めた)A代表に立候補する素晴らしい機会だ。W杯の準備の一環。最後のテストとなる」とサバイバルの号砲を鳴らした。5人がA代表初選出と新戦力の活躍も期待されるが、注目はブラジルW杯後から代表の主力を担ってきた清武の復帰だ。

 2月にスペイン1部セビリアからJ1C大阪に復帰したものの、不調が続き、6月末には左太もも裏の筋損傷で長期離脱を強いられた。10月15日の鳥栖戦では先発できるまでに回復したが、本調子には程遠い状態。代表指揮官も「まだトップコンディションではない。今回は直接話をしたい」と慎重な姿勢だった。

 それでもあえて清武の招集に踏み切った狙いは何なのか。「清武は代表での実績も積み重ねてきて、監督にも選手にもしっかりと意見を言う。ピッチ外の部分、リーダーシップなども含めてハリルさんは期待しているのではないか」と代表事情に詳しいJクラブ関係者は指摘する。

 代表ではMF長谷部誠(33=Eフランクフルト)が長年主将を務め、ハリルジャパンでも重責を担っているが、3月に手術した右ヒザの状態が芳しくなく、クラブでも常時出場できないなど予断を許さない状況。そのため指揮官も「長谷部がいるとチームの中心となって声を出す。ただ、いないとそういう問題も出てくる」と長谷部不在も想定して新主将候補を模索している。

 しかもFW本田圭佑(31=パチューカ)やFW岡崎慎司(31=レスター)ら求心力のある経験者が代表から外れており、MF山口蛍(27=C大阪)を高評価も「なかなか彼の声が聞こえてこない」と指揮官はコミュニケーション力に不満顔。そこで期待を寄せるのが、国内外で多くの経験を積みチーム内でも発信力のある清武というわけだ。

 以前から「キャプテンをやりたい」と発言している清武にも異論はないだろう。ハリルホジッチ監督は「誰がキャプテンになるべきか、誰がコミュニケーションを取っているのか見ていきたい」と語っていたが、かねてニューリーダーとして期待されていた清武が最有力候補となりそうだ。