奇跡を起こせるのか――。J1川崎は29日、敵地での柏戦に2―2と引き分けて、首位鹿島との勝ち点差を4に広げられた。今季も残り3試合。直接対決も終わっている状況で、逆転リーグ優勝は非常に厳しくなってきたが、イレブンはあきらめていない。“大ドンデン返し”を起こすためスクランブル態勢で最後まで突き進む。

 この日は降雨の影響で開始が30分遅れたようにピッチ状態は最悪。川崎は持ち味のパスワークを発揮できなかった。2点を先行される状況から意地を見せて、後半45分にはFW小林悠(30)の得点で引き分けに持ち込んだものの、首位との差は広がってしまった。

 柏の先制点につながるミスを犯したDF奈良竜樹(24)は「こういうピッチコンディションでも勝ち切る強さを身につけないといけない」と厳しい表情。タイトルの行方を左右する大一番で勝ち切れないのは「無冠クラブ」らしいと言わざるを得ないが、大黒柱のMF中村憲剛(36)は「勝てなかったのは残念だけど、下を向く必要はない」と力強く言い切った。

 言葉だけではない。11月の国際Aマッチデー後に、再開となる残り3試合に向け反攻態勢が整いつつあるのだ。9月23日の神戸戦で左太もも肉離れを発症し今季の復帰は絶望視されていたMF大島僚太(24)が驚異的な回復力を見せれば、同戦で右ヒザを負傷したMF阿部浩之(28)も先週から練習に合流した。

 チーム関係者も「最後のところは間に合うかもしれない」と見通しを語る。たとえ先発出場は難しくとも躍進を支えてきた大島と阿部がベンチに入れば、イレブンの士気は高まる。その上で2人がスーパーサブとして控えることで、対戦相手に与える脅威も格段に上がるというわけだ。

 さらにFW森本貴幸(29)とルーキーFW知念慶(22)も終盤戦では頼もしい存在だ。同僚ですら“理解不能”という不思議な性格を持つ点取り屋はプレッシャーとも無縁。この日は知念が、0―2の後半25分に反撃のゴールを決めた。DF谷口彰悟(26)は「新しいヒーローが出てくるとチームが乗ってくる」と活躍を期待した。

 残り3試合。思い描いた通りに事は進むのか。まずは11月4日に控えるC大阪とのルヴァンカップ決勝で「無冠クラブ」を返上し逆転リーグVにつなげたいところだ。