日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(65)の“大噴火”がイレブンの混乱に拍車を掛けた。3―3の引き分けに終わったハイチ戦から一夜明けた11日、欧州組の選手たちが所属クラブに合流するため続々と出国した。前夜は格下相手にホームで3失点を喫する散々の内容で、指揮官の怒りが爆発。しかし、改善点など肝心の話が語られることはなく、選手の間には動揺ばかりが広がっている。

 羽田空港で取材に応じたFW浅野拓磨(22=シュツットガルト)は、ハリルジャパン発足後最多となる3失点を喫したハイチ戦を神妙な面持ちで振り返った。

「監督はめっちゃ怒っていた。昨日はいつも以上にキレているな、と。試合後の怒りとしては最大だった」

 普段から感情が高ぶりやすい指揮官だが、あまりにも情けない試合内容にこれまで見せたことがないほど声を荒らげたという。途中出場したFW武藤嘉紀(25=マインツ)も「怒って当たり前だと思う。いいプレーをしたかというと、そうではない。勝ち切らないといけない」と反省の言葉を並べた。

 結果が悪ければ叱られるのは当然。しかしハリルホジッチ監督には、大事な“その先”が抜けていた。浅野は「監督は興奮して怒っていたけど、じゃあ何がダメで、何を改善していくのかという細かい話がなかった。監督が何を感じて怒って、僕たちに何を求めているのか。聞くチャンスはまた代表に来ないとない」と冷静に話した。

 試合直後はあまりにひどい選手たちのプレーぶりに激高した指揮官。だが、怒りに任せて怒鳴り散らしたものの、問題点や改善点の指摘、分析など建設的な話が一切なかったというのだ。

 これでは敗戦のストレスを選手にぶつけただけで、チームとして何も得るものはない。選手たちもモヤモヤを抱えたまま所属クラブへ戻ることになる。精神的に迷いがあっては今後のプレーにも影響が出かねない。

 怒りだけぶつけて解決策を提示しないのは、どこの世界にもいる“ダメ上司”の典型。ピッチ内外で混迷の度合いを深め、最悪の形で10月シリーズを締めくくることになった。