6大会連続のW杯出場を決めた日本代表に新たなヤングヒーローが誕生した。31日のロシアW杯アジア最終予選オーストラリア戦の後半37分、日本中のド肝を抜いたのがチーム最年少のMF井手口陽介(21=G大阪)。バヒド・ハリルホジッチ監督(65)が軽視する国内組の存在感を際立たせたことで、ロシアW杯に向けてJリーガー逆襲の呼び水になりそうだ。

 ノドから手が出るほど欲しかった追加点を挙げたのは、本来ならDFが付ける背番号2の井手口だった。1―0の後半37分、左サイドから中央にカットインし、右足で強烈なミドルシュート。値千金のA代表初ゴールを決めたチーム最年少は「(決まった瞬間は)頭が真っ白になった。枠に入ればいいかなと思ってうまく力が抜けていたのがよかったと思う」と笑みを浮かべた。守備面でも抜群のボール奪取能力を発揮し、底知れぬスタミナで勝利に貢献した。

 昨夏のリオデジャネイロ五輪メンバーにも選出された。将来を嘱望されていた素質は日本サッカー界の未来を左右する一戦で開花した。そんな若武者を元日本代表DF中沢佑二(39=横浜M)は「プレーをサボらないよね。Jリーグでもかなり(ボールを)回収している」と高く評価する。しかも、かねて中沢が「大きな選手を相手にボールを奪えるようになれば、海外の舞台でも活躍できると思う」と指摘していた課題も、大型選手の多いオーストラリア相手にクリアしてみせた。

 来年のロシアW杯で主力を担うことも期待できるまでに成長したが、プラス材料はそれだけではない。ハリルホジッチ監督からあまり目をかけられていない国内組に希望を与えた形だ。

 これまでは「どうせ国内組だから、ハリルさんは見てないでしょ」とJリーガーからはあきらめムードが漂っていた。そんな中で、G大阪所属の井手口とC大阪のMF山口蛍(26)が大活躍。これで状況が一変してもおかしくなくなった。海外組よりもコンディションを調整しやすいことも証明したことで、Jリーガーのやる気に火をつけた。

 井手口の存在感は増すばかりだが、一発屋で終わるつもりはない。「もっと成長して、また選ばれるように満足せず頑張っていきたい」。Jリーグにとっても大きな意味を持つ勝利になった。