今夏メキシコに渡ったFW本田圭佑(31=パチューカ)がハリルジャパンで構想外の危機に直面した。休暇を終えて5日に再来日した日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(65)は早速J1を視察してロシアW杯アジア最終予選オーストラリア戦(31日、埼玉)に向けた準備を開始したが、代表チームの現状に弱気節を連発。最も心配している本田については、負傷の回復具合を気にするどころか、まさかの“裏切り”に失望を隠せないでいる。

 欧州で約1か月のオフを過ごしたハリルホジッチ監督は日焼けして精悍さを増していたが、口をついたのは代表の危機的状況だった。

「今ケガ人が多い。かなり心配している。彼らが間に合うか。私が来日してから最も難しい状況が今だ。ここまで多くのケガ人がいたことはなかった」と険しい表情で故障者続出の現状を嘆いた。

 さらに指揮官を嘆かせたのが、メキシコに電撃移籍した本田の決断。「彼の選択だから」としつつも「欧州に残ってほしいと思った」と“本音”を吐露したのだ。

 本田は年齢的な面もあってスピードや体力の衰えが目立ってきているが、ハリルホジッチ監督は欧州で実績を重ねてきた経験を買っている。特にイタリア1部の名門ACミランに在籍していたこと自体を高く評価し、どんなに試合に出られなくても「ビッグクラブで練習するだけでも違う」と主張。世界各国からハイレベルな選手が集まる中で過ごす環境を、代表招集の大きな根拠としてきた。

 しかし本田は欧州各国のクラブからオファーがありながら、5億円近い高年俸や「未開の地がいい」との理由からメキシコ行きを決断。メキシコリーグは欧州より数段格下で「Jリーグとかアジアとあまり変わらないレベル。都落ちの感は否めない」(Jクラブ関係者)と言われている。そうした状況でプレーするとなれば“劣化”が早まる可能性もあるだけに、ハリルホジッチ監督があからさまにガッカリしたのは無理もない。

 また日本サッカー協会の西野朗技術委員長(62)は欧州と比べて、メキシコは情報が入りにくいことも指摘している。協会がパチューカのクラブ関係者との連携や、メキシコでの情報収集体制をどれだけ築けるかも未知数。実際に、現在右ふくらはぎを痛めて新天地でのデビューが遅れている本田の詳細なコンディションを協会は把握しきれていない。代表選考のうえではあまりにもマイナスが多い決断というわけだ。

 ハリルホジッチ監督はこれまで本田への厚い信頼を口にし、どれだけ批判されても擁護し続けてきた。しかし自らが勧める欧州に残留せずメキシコ行きという“裏切りの決断”をしたことで、今後は本田外しをためらうこともなくなりそうだ。