不振の続くJ1浦和が9日、ホームの新潟戦で2―1と逆転勝利。「負ければ辞任」を示唆していたミハイロ・ペトロビッチ監督(59)の進退問題は、ひとまず先送りされた。しかし、最下位クラブを相手にお粗末な試合内容で、チームの危機的な状況に変わりはない。名門は現状を打破できないまま指揮官と心中するのか?“デッドライン”はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝となりそうだ。

 5日の川崎戦で1―4と大敗後、指揮官が新潟戦で敗れた場合に辞任の意向を示したことで、進退がかかることになった大一番。前半35分に先制を許したものの、後半29分に主将のMF阿部勇樹(35)、同34分にFWラファエルシルバ(25)と立て続けにゴールを奪って、どうにか逆転勝利をもぎ取った。

 とはいえ、最下位の新潟に薄氷の勝利と試合内容は最悪。MF興梠慎三(30)が「ヤバイでまだ。攻撃も守備もダメ」と話すように、チーム状況に好転の兆しは見えてこない。

 試合後の会見でペトロビッチ監督は自身の進退について「クラブの決定を私は100%、リスペクトする。私がどうあるかは、クラブが決めることだ」と強調。浦和側は続投の方針を明確にしており、指揮官が示した辞任の意思を引っ込めたことで、ひとまず首の皮一枚つながった。実際、首位C大阪と勝ち点差9の8位はまだ逆転圏内。天皇杯やルヴァンカップも残されており、タイトル獲得の可能性は十分にある。このためクラブ側もペトロビッチ監督を切りづらいのが実情だ。

 それでは、低迷から抜け出せなければ、どこで“決断”が下されるのか。そのポイントになるのが、勝ち進んでいるACLだ。日本代表OBは「ACLで勝つか負けるかは(去就決断の)大きなところではないか。鹿島もそうだった」と指摘する。鹿島はチームを昨季J1王者に導いた石井正忠監督(50)を5月31日に電撃解任。シーズン序盤で上位と差のない7位だったにもかかわらず、低迷していたチーム状況を改善するため更迭に踏み切った。特に前日(同30日)にACL決勝トーナメント1回戦で広州恒大(中国)に敗れたことが決定打となった。

 ACLは優勝すれば世界王者を決めるクラブW杯(12月、UAE)の出場権が得られる重要な大会。もちろん、ACLの前に浦和がさらに深刻な状態に陥る可能性もあるが、次のACL準々決勝・川崎戦(8月23日=等々力、9月13日=埼玉)こそが指揮官にとって“最後の審判”の場になりそうだ。一難去ってまた一難、ペトロビッチ監督は今季を全うできるのだろうか。