港町に“ポルディフィーバー”が巻き起こった。J1神戸に加入した元ドイツ代表10番、FWルーカス・ポドルスキ(32)が6日に来日し、神戸市内で入団会見を行った。大歓迎を受けた世界屈指のストライカーは“神戸愛”をアピールし、三木谷浩史会長(52)は目標とするアジア制覇のキーマンに指名した。一方、Jリーグでは欧州出身のストライカーが活躍できない“負の歴史”も。果たしてドイツが誇るスター選手はジンクスを打ち破れるか――。

 推定年俸500万ユーロ(約6億4000万円)のポドルスキはこの日朝に関西国際空港に降り立つと、わざわざチャーター機に乗り換えて神戸空港に到着。約1000人のファン・サポーターなどから熱烈な歓迎を受けながら用意されたレッドカーペットを歩いた。

 その後、神戸市内で行われた会見で「家族会議で決めた」と移籍の理由を説明し「サッカーだけではなく日本の文化も学びたい」との意欲を語った。また世界的ブランドの「神戸牛を食べたい!」とアピールすると、三木谷会長らと高級レストランで会食。クラブ側も最大限の“おもてなし”で大物を迎えた。

 ドイツ代表として2014年ブラジルW杯で優勝。バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)やアーセナル(イングランド)、インテル(イタリア)などのビッグクラブで活躍した実績は文句なし。三木谷会長は「アジアを代表するクラブを目指している。世界レベルのスーパースターがどんどんJリーグに来る流れになればいい」と神戸を中心にJリーグを盛り上げる壮大な計画をブチ上げた。

 異例の歓迎ぶりはクラブだけではない。この日使用したチャーター機の使用料(推定100万円)も地元企業に「ご提供を頂いた形」(クラブ幹部)という。また会見にはJリーグ事務局がスタッフを派遣。「海外メディアの対応などにも追われるので打ち合わせのため」と説明したが、選手の入団会見に事務局が人員を割いて“後方支援”するのは異例だ。

 一方で大物スター選手には不安もある。14年には、C大阪に10年南アフリカW杯で得点王とMVPを獲得したウルグアイ代表FWディエゴ・フォルラン(38=ムンバイ)が加入。世界的ストライカーの加入は大きな話題となったが、期待されたパフォーマンスを発揮できずにチームも低迷。同年にJ2へ降格した。

 さらに、J1クラブ強化担当者は「欧州出身の選手が日本で活躍できないっていうのはJリーグの定説。以前から言われていること」と指摘する。実際、成功例の多い南米選手と比べると、欧州出身のビッグネームでは名古屋でプレーしたユーゴスラビア代表FWドラガン・ストイコビッチ(52)が大活躍しただけだ。

 名古屋に所属したイングランド代表FWゲーリー・リネカー(56)、磐田でプレーしたイタリア代表FWサルバトーレ・スキラッチ(52)、柏に入団したブルガリア代表FWフリスト・ストイチコフ(51)ら歴代のW杯得点王も日本で結果を残せなかった。神戸でもデンマーク代表MFミカエル・ラウドルップ(53)やトルコ代表FWイルハン・マンスズ(41)が成功しなかった。

 果たして、ポドルスキは強力なバックアップを得てジンクスをはね返すことができるのか。注目のデビュー戦はリーグ中断明け初戦となる29日の大宮戦(ノエスタ)になりそうだ。

【本紙カメラマンにケーキを!】

 ポドルスキの入団会見後に、サプライズでウエルカムケーキが振る舞われた。司会から「食べてください」と促されたポドルスキは報道陣に“一緒に食べよう”とばかりに誘うものの、みんな撮影に夢中。そのとき、前へ行こうとするテレビカメラを本紙中西カメラマンが注意すると、スター選手はケーキを食べたいアピールと勘違いし、近くまで歩み寄ってまさかの“ファーストバイト”をしてくれた。なんとも気さくなポドルスキの大ファンになった本紙カメラマンでした。