【イラン・テヘラン13日(日本時間14日)発】サッカー日本代表はロシアW杯アジア最終予選イラク戦で1―1と引き分けたものの、勝ち点1を加えてW杯出場に王手をかけた。FW本田圭佑(31=ACミラン)は5試合ぶりの先発起用に応え、右CKからFW大迫勇也(27=ケルン)の先制点をアシストするなど、不振からの復調を印象付けた。歓迎すべき状況と思いきや、本人は理想と現実の間でジレンマを抱えている。

 31歳の誕生日を迎えたこの日、キャプテンマークを巻いた本田は5試合ぶりに先発復帰した。前半8分には、右CKから大迫の先制点をアシストし、試合終盤には相手選手との競り合いで口元を切って流血するアクシデントがありながらもフル出場。起用したバヒド・ハリルホジッチ監督(65)の期待に応えた。

 FW久保裕也(23=ヘント)に右サイドのポジションを奪われて、ベンチ要員に降格していたが、巻き返しに転じた。本田は「相手のサイドバックも嫌がっていたし(ボールを)落ち着かせるところは問題なかったと思う」と自身のプレーに納得の様子だったが、先制しながらも勝ちきれなかった結果には「悔しいけど仕方ない。次の試合(8月31日、オーストラリア戦)は勝たないといけない」と気持ちを引き締めた。

 勝ち点3を積み上げられなかった結果はともかく、自身が日本代表に必要なピースであることを改めて証明し、オレ様復活となりそうな状況は整いつつあるが、現実を素直に喜べない事情もある。この日、指揮官に与えられたのは右サイド。ザックジャパン時代から慣れ親しみ、7日の親善試合シリア戦で存在感を発揮した司令塔役となる中盤のポジションは回ってこなかったからだ。ハリル体制でトップ下を務める10番のMF香川真司(28=ドルトムント)が、左肩脱臼で離脱したにもかかわらずだった。

 さらに、速攻を主体としたサッカーを求める指揮官への不満も解消できていない。試合前には他イレブンとともにパスサッカーの利点を主張し、意見が食い違うこともあった。

 本田は試合後に「変な誤解を招くので、あまりしゃべりたくない」と前置きした上で「監督にはやりたいサッカーがあって、それをストレートに伝える人。それを若い選手は聞きすぎてしまう。そこの整理をうまくできずに、こういう大事な試合で自分の持っている力の半分くらいしか出せない選手も実際にはいる」と改めて指揮官の方針を疑問視した。

 本田は“理想と現実”の間で抱えたジレンマを解消させられるのか。簡単ではないが、そのときこそエースの完全復活と言えそうだ。