窮地のFW本田圭佑(30=ACミラン)が「司令塔」で復権だ。サッカー日本代表は7日、キリンチャレンジカップ(東京)でシリアと対戦し、1―1の引き分けに終わった。ロシアW杯アジア最終予選イラク戦(13日、イラン・テヘラン)に向けた最終テストの場で不安が残る試合内容だったが、久しぶりに中盤で起用された本田が存在感を発揮。イレブンからは待望論が続出し、代表落ちの危機から一転、スタメン復帰も見えてきた。

 バヒド・ハリルホジッチ監督(65)がついに“奥の手”を出した。0―0の後半開始からFW久保裕也(23=ヘント)に代わって本田がピッチに登場。最初は通常の右サイドでプレーしたが、同18分にFW浅野拓磨(22=シュツットガルト)が投入されるとインサイドハーフの位置にポジションを変更した。

 この日はトップ下を置かない4―3―3のシステムだったため、本田の位置は事実上の司令塔。トップ下で不動のレギュラーだったザックジャパン時代以来となる“自分の家”へ戻り、水を得た魚のように躍動した。それまで停滞していた攻撃にリズムをもたらして、チャンスを演出。攻守の起点として存在感を示した。

 本田は試合後のテレビインタビューで「ポジティブにとらえてイラク戦に向けて修正したい」と語ったものの、取材エリアでは無言を貫いた。今季はACミラン(イタリア)で出番を失い、ハリルジャパンでも絶好調の久保に右サイドのポジションを奪われた。だが、まだ貴重な戦力であることを自らのパフォーマンスで証明した。

 もともと本田自身が中盤への原点回帰を検討していた中で、ハリルホジッチ監督がエースの能力を最大限に生かす最終手段として司令塔起用を計画していたという。日本サッカー協会の西野朗技術委員長(62)は「プランしていたこと。イラク戦を見据えた部分もある。トライもあった。こういう試合もやって準備できる状態にはなったと思う」と説明した。

 特に日本の10番を背負うMF香川真司(28=ドルトムント)が前半7分に負傷し、そのまま病院に救急搬送。精密検査の結果、左肩関節前方脱臼と診断された。代表に帯同するかは8日に判断する予定で、離脱の可能性もある。このためイラク戦の出場は微妙とあって、本田のスタメン復帰が濃厚となってきた。

 エースの復権をイレブンも歓迎ムード。DF吉田麻也(28=サウサンプトン)は「やりやすかった。今日に限っていえば(本田が)中で良さが出たかな」。FW原口元気(26=ヘルタ)は「キープ力があるので、高い位置でタメがつくれるのはプラス」とし、浅野も「試合後に『真司とは(特長が)違う』と本田さんは話していたし、タメをつくってタイミングよくパスを出せる選手なので」と期待を寄せた。

 サッカー界では、本田の置かれた現状から「復活は難しい」との意見も出ていた。しかし約3年ぶりに司令塔としての役割をこなし猛アピール。ハリルジャパンはもちろん、今オフの去就にもプラスに働くことは間違いない。再び“オレ様”の時代到来となるか。