J1鹿島は31日、昨季チームをリーグ優勝に導いた石井正忠監督(50)の解任と、後任として大岩剛コーチ(44)の昇格を発表した。30日のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦で広州恒大(中国)に敗れ、敗退が決まったことでクラブ側は決断。とはいえ、リーグ戦でもまだ優勝が狙える位置にいる中での“大ナタ”だけに、チーム内外に波紋が広がっている。

 2015年7月に就任した石井監督は昨季、J1と天皇杯の2冠を獲得し、クラブW杯でも決勝で欧州王者レアル・マドリード(スペイン)と好勝負を演じて準優勝。その実績から鹿島は監督解任と最も遠い位置にいるクラブと見られていた。

 しかし、ある日本代表OBによれば「クラブ側は昨季終盤、監督交代を検討していたと聞いている。だがJ1王者となり、クラブW杯でも結果を残したことで解任しにくい状況になってしまった」。一番のポイントだったのはFW金崎夢生(28)との関係だった。
 昨季第2ステージの湘南戦(8月)で石井監督の交代指示に金崎が激怒。この件で石井監督は心労が重なり休養を余儀なくされた。すぐに復帰したものの「結局、金崎をコントロールできなかったわけで、監督としての資質にクラブ側が疑問符をつけ始めた」(別のJ1クラブ関係者)のもこの時期だった。

 今季はACL制覇も視野にMFレオシルバ(31)、FWペドロジュニオール(30)といった実力者を獲得。だが、これが逆に選手の自主性を引き出してきた石井采配を殺す形となり、ケガ人も重なって勝ちきれなくなった。鈴木満強化部長(60)が「チームの持つ能力を出し切れていない。変化が必要だと判断した」のも“常勝軍団”の宿命といっていい。

 ただ、もともと鹿島の戦力、戦略、選手層はトップクラス。監督解任劇は上位進出に向けたカンフル剤になりそうだ。