若武者が覚醒の時を迎えた。28日に埼玉スタジアムで行われたロシアW杯アジア最終予選で日本はタイに4―0で快勝。立役者となったのが1得点2アシストの大活躍を見せたFW久保裕也(23=ヘント)。右サイドに君臨し、新エースに名乗りを上げた。素質を高く評価されながら伸び悩んだ時期もあったが、ここへきて一気にブレーク。飛躍のきっかけとなったものとは――。

 背番号14がまたもド派手なパフォーマンスを見せた。2―0で迎えた後半12分、スローインからのボールを受けると、右サイドから中央にカットイン。シュートコースが開いたのを見逃さず、コンパクトに左足を振り抜いた。ゴール右上隅に突き刺さるファインゴールに思わずガッツポーズも飛び出した。

 試合を決定づける価値あるゴール。その流れを作ったのも久保だった。前半8分に右サイドからグラウンダーのクロスを入れ、岡崎を経由して香川のゴールにつなげた。同19分にも右サイドから絶妙のクロスで岡崎のゴールをアシスト。23日のUAE戦での1得点1アシストに続く活躍に「得点に絡むことだけを考えていたので良かった」とクールに振り返った。

 今年1月にスイスのヤングボーイズからベルギー1部ヘントに移籍。新天地では7試合5ゴールの活躍で、チームを優勝プレーオフに導いた。その好調ぶりをそのまま持ち込み、正念場だった日本代表に力を与えた。

 京都ユース時代に久保を指導した本田将也氏(43=J2京都チーム強化本部育成部部長)は「昔は自分が点を取ればいいという感じだったが、チームのことも考えるようになった。背負うものがあればプレーも変わるもの」と語り、海外移籍でメンタル面が成長したという。

 ストイックな性格でストライカーの高みを目指したが、スイス1部のヤングボーイズ時代には同僚と連係が取れず、パスが出てこない時期もあった。オフに面談した本田氏は「コミュニケーションが取れないと、パフォーマンスに影響が出るという中、人の話を聞くようになったと言っていた」。

 以前は消える時間帯も多かったが、チームメートに認めてもらうためにハードワークを欠かさず、チームの勝利に対しても貪欲になった。その結果、久保にボールが回ってくるようになり、欧州でゴールを量産できるようになったのだ。

 A代表でもイレブンと積極的に交流している。同世代のFW浅野拓磨(22=シュツットガルト)とは「僕らの世代が代表を奮い立たせていかないと」と誓い合った。ロシアW杯に向け、さらに存在感を高めそうだ。